判旨
供述が強制によるものであると認められない限り、当該供述を事実認定の証拠に採用することは適法であり、憲法31条等の適正手続に反しない。また、贈収賄罪の成立において、大赦の対象となった他の犯罪事実と併合罪の関係にあっても、当該贈収賄の罪責は免れない。
問題の所在(論点)
1. 強制の疑いがある供述を証拠として採用し、事実認定を行うことは憲法31条等に違反するか。 2. 併合罪の一部が大赦の対象となった場合、残余の贈収賄事実の罪責にどのような影響を及ぼすか。
規範
供述証拠の任意性が否定されない限り、これに基づき犯罪事実を認定することは適法である。憲法31条が要求する適正手続の観点からも、強制によらない供述を証拠として採用することは許容される。また、複数の公訴事実のうち、一部が大赦の対象となり免訴されるべき場合であっても、他の独立した公訴事実については別途刑法上の構成要件該当性を判断し、処断すべきである。
重要事実
被告人Aは収賄、被告人Bは贈賄の事実により起訴された。これに加え、両名には物価統制令違反(またはその幇助)の事実も併合罪として公訴提起されていた。第一審・原審を経て、物価統制令違反については昭和27年政令117号による大赦の対象となった。弁護側は、事実認定の基礎となった供述が強制によるものであり、憲法31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
記録を精査しても、原判決が事実認定に採用した聴取書記載の被告人らの供述が強制によるものであるとは認められない。したがって、任意性のある供述を証拠として事実を認定した原判決に採証法則違反や憲法違反は存在しない。次に、物価統制令違反については大赦により免訴すべきであるが、被告人Aの金一万円の収賄事実は刑法197条1項前段に、被告人Bの贈賄事実は同198条、197条1項にそれぞれ該当し、独立して犯罪が成立する。したがって、大赦の影響を受けない贈収賄の事実について各懲役刑を科すことは正当である。
結論
被告人らの供述に強制は認められないため、これに基づき贈収賄の事実を認定し、有罪とした原判決の判断(大赦部分を除く)は正当である。被告人A、Bをそれぞれ懲役1年(執行猶予3年)に処し、Aから収賄額を追徴する。
事件番号: 昭和27(れ)197 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共同被告人の公判廷における供述や、被告人自身の公判調書記載の供述を総合することにより、贈賄罪の事実認定を行うことは適法である。また、併合罪の関係にある一部の罪について大赦があった場合には、当該事実について免訴を言い渡した上で、残余の罪について刑を量定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は贈賄罪…
実務上の射程
自白や供述の任意性が争点となる事案において、客観的な強制の証拠がない場合の証拠能力を肯定する裁判例として引用できる。また、免訴事由(大赦)と併合罪の関係において、残余の罪についての刑法適用のあり方を示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(れ)1030 / 裁判年月日: 昭和25年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一部のみが起訴され、あるいは共同被告人間で科刑に差異が生じたとしても、それは裁判所の裁量の範囲内であり、憲法14条の法の下の平等や憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令違反の罪に問われたが、同様に利得を得たはずの共犯者が起訴されず、被告人のみが起訴・処罰されることに…
事件番号: 昭和26(れ)2292 / 裁判年月日: 昭和27年11月4日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は職権で当該部分を調査し、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令違反(人造絹織物の不当高価買受・販売)および贈賄の罪に問われ、原審で有罪判決を受けていた。上告審継続中に昭和27年政令第117号および第87号により、…
事件番号: 昭和27(あ)3021 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人の複数の犯罪事実のうち、一部の罪についてのみ大赦があった場合、大赦のあった部分については免訴とし、それ以外の罪については改めて刑を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人の複数の犯罪事実について第一審及び原判決がなされたが、上告審の継続中に昭和27年政令117号大赦令が公布された。被告…
事件番号: 昭和26(れ)688 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有する者に対して利益を供与した行為につき、公務員に対する贈賄罪の成立を認め、物価統制令違反については大赦による免訴を言い渡した。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年当時、山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有していたAに対し、贈賄行為(第一の事実)を行っ…