判旨
通貨偽造罪(刑法148条1項)とその行使罪(同条2項)の間には、手段と結果の関係があるため、刑法54条1項後段に基づき、牽連犯として科刑上一罪となる。
問題の所在(論点)
通貨偽造罪と、その偽造した通貨を行使する偽造通貨行使罪は、刑法上の罪数関係においていかなる関係に立つか。牽連犯(54条1項後段)として一罪となるかが問われた。
規範
ある罪(手段)が他の罪(結果)を犯すための通常かつ必要な手段である関係にある場合、刑法54条1項後段の「犯罪の手段又は結果である行為」に該当し、牽連犯として最も重い刑で処断される。通貨を偽造する行為とその偽造した通貨を行使する行為の間には、この手段・結果の干係が認められる。
重要事実
被告人Aは、日本銀行券預入令等の特別法に違反して旧券の授受、証紙の偽造及び交付等を行った。さらに、他者と共謀して通貨を偽造し(通貨偽造罪)、偽造された通貨であることを知りながらこれを実際に行使した(偽造通貨行使罪)。原審はこれらの行為を認定し、被告人を処断したが、上告審において一部の罪が免訴の対象となったため、職権で法令適用の妥当性が検討された。
あてはめ
本件において、被告人による通貨偽造の所為は、その偽造した通貨を行使するという結果を実現するための手段として行われている。判旨は、通貨偽造と偽造通貨行使の間に「手段結果の干係がある」と明示した。これは、偽造行為が行使を目的としてなされるという犯罪の性質上、両者が密接な関連性を有していることを評価したものである。したがって、これらは独立した併合罪ではなく、科刑上一罪として処理すべきであるとされる。
結論
通貨偽造と偽造通貨行使は、手段と結果の関係にあるため、牽連犯として最も重い偽造通貨行使罪(あるいは加重された刑)の範囲内で処断される。
事件番号: 昭和26(あ)1086 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】複数の偽造公文書を一個の行為で一括して行使した場合、一個の行為で数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)が成立する。また、公文書偽造、同行使、及びこれに伴う詐欺行為の間には、手段と結果の関係が認められるため、牽連犯(同条1項後段)として処断される。 第1 事案の概要:被告人は、偽造された…
実務上の射程
通貨偽造・行使の罪数関係を確定させた重要判例である。司法試験においては、通貨偽造罪を論じた後、必ずその行使罪との罪数関係を言及する必要があり、その際に「手段・結果の関係(牽連犯)」と簡潔に引用する。なお、偽造証紙の偽造と交付についても同様に牽連犯の関係が認められている。
事件番号: 昭和26(れ)2098 / 裁判年月日: 昭和27年2月7日 / 結論: 棄却
収賄と公印不正使用とは牽連犯にならない。
事件番号: 昭和22(れ)118 / 裁判年月日: 昭和22年12月17日 / 結論: 棄却
正規の手續によらないで入手した證紙を舊圓紙幣に貼附し、限度額を超えて新圓紙幣とみなされるものを作成するときは、通貨僞造罪が成立する。
事件番号: 昭和41(あ)2732 / 裁判年月日: 昭和42年8月28日 / 結論: 棄却
甲から金員を騙取するため、乙名義の偽造の委任状等を登録官吏に提出し、乙の不動産の登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使するとともに、甲にその登録済権利証を示して、抵当権設定登録を経由した旨誤信させ、同人から借用金名下に金員を騙取したときは、公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との牽連犯…
事件番号: 昭和25(あ)912 / 裁判年月日: 昭和26年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法54条1項後段の牽連犯が成立するためには、犯人の主観のみならず、数罪間に罪質上通例として手段・結果の関係が存在することを要する。窃盗罪と詐欺罪の間には、客観的にそのような手段・結果の関係が存在するとは認められないため、併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人は第一の所為として窃盗罪を犯し、第二…