正規の手續によらないで入手した證紙を舊圓紙幣に貼附し、限度額を超えて新圓紙幣とみなされるものを作成するときは、通貨僞造罪が成立する。
舊圓紙幣に不正に入手した證紙を貼附する行爲と通貨僞造罪
刑法148條、,昭和21年勅令84號1條,昭和21年勅令90號1條,昭和21年大藏省令13號2條,昭和21年大藏省13號3條
判旨
通貨偽造罪は通貨発行権のない者が通貨の外観を具備する物を作成することで成立し、正規の手続によらず入手した証紙を旧券に貼付して新券と看做される物を作成する行為も同罪を構成する。
問題の所在(論点)
通貨発行権のない者が、真正な材料(旧券および証紙)を用いつつ、正規の手続に違反してこれらを組み合わせる行為が「偽造」に該当するか。
規範
通貨偽造罪(刑法148条1項)の本質は、通貨発行権者の発行権を保障し、通貨に対する社会の信用を確保することにある。したがって、通貨発行権のない者が、流通に置く目的をもって通貨の外観を具えた物を作成すれば、たとえその材料や方法が真正な通貨と同一であっても、同罪が成立する。
重要事実
戦後の通貨切り替えに際し、政府は旧日本銀行券(旧券)に一定の証紙を貼付したものを新券と看做す措置を講じた。被告人は、正規の手続によらずに入手した証紙を利用し、法令で許容された限度額を超えて、所持する旧券に当該証紙を貼付して新券と看做される物を作成した。
事件番号: 昭和25(れ)661 / 裁判年月日: 昭和25年6月29日 / 結論: 棄却
一 日本銀行券は昭和二一年三月二日限り強制通用力を失い(同年二月一七日勅令第八四號日本銀行券領入令及び同日大藏省令第一三號日本銀行券預入令施行規則)、その後は舊日本銀行券に一定の證紙を貼用したものが新券と看做されるに至つた(同年二月二〇日勅令第九〇號日本銀行券預入の特例の件)。それ故、被告人がその後判示のように行使の目…
あてはめ
通貨偽造罪の保護法益は通貨発行権と社会の信用である。被告人は通貨発行権を有しないにもかかわらず、正規の手続を経ずに証紙を入手し、限度額を無視して貼付行為を行っている。この行為により作成された物は、形式・実質の点において真正な新券と同様の流通状態に置かれ得る外観を有している。このように発行権限のない者が通貨を作成する行為は、たとえ素材が本物であっても法律上「偽造」と評価されるべきである。
結論
被告人の行為は、通貨発行権のない者による通貨の作成にあたり、刑法148条1項の通貨偽造罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、真正な素材を流用・悪用した場合であっても、権限のない者による作成であれば「偽造」に当たることを明示した。通貨変造罪(148条2項)との区別において、作成された物が「新たな通貨」としての外観を備えるに至る場合は偽造となるという、偽造概念の広範さを理解する上で重要な射程を有する。
事件番号: 昭和24(れ)2485 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
刑法第一四九條に規定する銀行券の僞造は通常人が不用意にこれを一見した場合に、眞正の銀行券と思い誤る程度に製作されることを要することは言うまでもない。されば、原審がその判決において押收に係る僞造百圓日本銀行券八三三二枚を證據中に飲用して被告人は他の者と共謀の上行使の目的を以て「二重合せ仙花紙に色別にして表は四回刷裏は二回…
事件番号: 昭和48(あ)804 / 裁判年月日: 昭和49年7月22日 / 結論: 破棄差戻
印刷物の一部に通貨と紛らわしい外観を有する部分があり、その部分が他の部分との切断により容易に独立の存在となり得るものを製造することは、通貨と紛らわしい外観を有する部分が他の部分と切断されるまでもなく、それ自体で通貨及証券模造取締法一条の「紛ハシキ外観ヲ有スルモノ」の製造に当たる。
事件番号: 昭和27(れ)172 / 裁判年月日: 昭和28年6月4日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】通貨偽造罪(刑法148条1項)とその行使罪(同条2項)の間には、手段と結果の関係があるため、刑法54条1項後段に基づき、牽連犯として科刑上一罪となる。 第1 事案の概要:被告人Aは、日本銀行券預入令等の特別法に違反して旧券の授受、証紙の偽造及び交付等を行った。さらに、他者と共謀して通貨を偽造し(通…