判旨
弗(ドル)表示の軍票は、刑法149条1項に規定される「内国ニ流通スル外国ノ紙幣、銀行券又ハ郵便貯金ノ証書」に該当する。
問題の所在(論点)
ドル表示の軍用手票(軍票)が、刑法149条1項にいう「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当するか。
規範
刑法149条1項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」とは、外国政府が発行し、その国の国内において通貨として流通するものを指すだけでなく、占領軍が占領地において通貨に代わるものとして流通させる軍票(軍用手票)であっても、それが実質的に外国の通貨としての機能を果たしている場合にはこれに含まれる。
重要事実
被告人が、弗(ドル)表示の軍票を偽造し、または行使した等の事実に基づき、外国通貨偽造等罪(刑法149条)の成否が争われた。当該軍票は、当時の日本国内において占領軍によって使用・流通されていたものであった。
あてはめ
判旨は詳細な理由を説示していないが、先行する昭和28年5月25日決定を引用し、弗表示軍票の性質を検討している。当該軍票は、外国(米国)の軍当局によって発行され、当時の日本国内(内国)において事実上通貨として流通していたものである。したがって、通貨に対する公共の信受を保護するという同条の趣旨に照らせば、これを「外国ノ紙幣」と同視して保護の対象とすべきであると解される。
結論
弗表示軍票は、刑法149条1項の「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当する。
実務上の射程
本決定は軍票に関するものであるが、その実質的な判断枠組みは、形式的な名称にかかわらず、実質的に外国通貨としての流通性を有するか否かに重点を置くものである。司法試験においては、通貨偽造罪の客体について、流通性の有無や『外国の紙幣』の解釈の広さを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1079 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】米軍軍票は、刑法149条1項にいう「内国ニ流通スル外国ノ紙幣」に該当する。これにより、米軍軍票の偽造等は外国紙幣偽造罪として処罰の対象となる。 第1 事案の概要:被告人らは、米軍軍票を偽造し、あるいはそれを使用したとして外国紙幣等偽造・同行使罪(刑法149条)に問われた。弁護側は、米軍軍票は日本国…
事件番号: 昭和30(あ)1352 / 裁判年月日: 昭和30年10月27日 / 結論: 棄却
本件弗表示軍票が刑法一四九条一項に内国に流通する外国の紙幣に当ると解すべきことは当裁判所屡次の判例の示すところである。
事件番号: 昭和31(あ)1748 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
通貨偽造罪における行使の目的は、自己が行使する場合に限らず他人をして真正の通貨として流通に置かせる目的でもよい。