判旨
不当に長い拘禁後の自白であっても、保釈によって拘禁が解除された後になされたものであれば、拘禁と自白との間に因果関係がないため、証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
不当に長い拘禁を解かれた後、相当期間を経てなされた自白について、拘禁と自白との間の因果関係が認められるか、またその証拠能力が否定されるべきかが問題となる。
規範
憲法38条2項および刑事訴訟法319条1項の「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」として証拠能力が否定されるためには、当該拘禁と自白との間に因果関係が認められることを要する。拘禁が解除された後になされた自白については、特段の事情がない限り、拘禁との因果関係は断絶したものと解するのが相当である。
重要事実
被告人4名は、刑事訴訟法施行前に公訴提起された事件において長期間拘禁されていたが、昭和23年1月中に保釈決定を受けて拘禁を解かれた。その後、同年3月18日の第一審公判において、被告人らは自白に及んだ。弁護人は、この自白が不当に長い拘禁後のものであるとして、その証拠能力を争い上告した。
あてはめ
本件において、被告人らが自白をしたのは保釈により拘禁を解かれた約2ヶ月後である。この事実に照らせば、第一審判決が証拠とした自白は、もはや拘禁による直接的な心理的圧迫の下でなされたものとは認められない。したがって、右自白と前示拘禁との間には因果関係がないことが明らかであり、不当な拘禁による自白排除の原則は適用されない。
結論
本件自白は、不当に長い拘禁後の自白には当たらない(因果関係がない)。したがって、これに証拠能力を認めた原判決に違憲の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
自白の任意性(因果関係)に関する判断枠組みを示すものである。不当な拘禁等の違法な状態が解消された後、相当の期間を置いてなされた自白については、前後の状況を遮断して因果関係を否定する傾向にあることを示す。答案上は、違法な抑留・拘禁後の自白の証拠能力を論じる際、保釈等の介在事情による因果関係の断絶を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和24(れ)1563 / 裁判年月日: 昭和24年10月11日 / 結論: 棄却
被告人は、昭和二三年一一月二五日逮捕状によつて兵庫警察署に逮捕せられ、翌二六日に勾留状態の執行を受けて以来引續き身柄を拘束されていたことが明かである。そうして原判決は、昭和二四年三月二三日の原審公判廷における被告人の供述即ち略ぼ四箇月の拘禁の後の自白を證據として採用している。しかし被告人は、昭和二三年一一月二六日に初め…