判旨
戦後の特殊な政治的状況下においても、台湾出身者を含む共犯者が存在する場合、原則として日本の刑事裁判権に服すべきであり、裁判権の欠如を理由とする控訴棄却や無罪判決は認められない。
問題の所在(論点)
日本の刑事裁判権の人的範囲、特に戦後の過渡期における台湾出身者に対する裁判権の行使の可否が問題となった。
規範
日本国内で犯罪が行われた場合、原則として全ての者に日本の刑事裁判権が及ぶ。特定の国籍や身分を有する者が当然に裁判権から除外されることはなく、裁判権の行使を否定するためには、条約や国内法上の明確な根拠が必要である。
重要事実
被告人は綿糸や砂糖等の統制額を超えた販売、および関税法違反の罪に問われた。弁護側は、共犯者とされるBが台湾人であり、当時の国際情勢(日本の敗戦と主権の変更等)に鑑みれば、Bは日本の裁判権に服さない者であると主張した。そのため、日本の裁判権を前提とした原判決には憲法違反および判例違反があるとして上告した。
あてはめ
最高裁判所は、記録上Bが裁判権に服さないことを裏付ける証跡がないと指摘した。その上で、昭和25年政令324号および昭和26年政令330号(外国人登録関係の法令)等の趣旨に照らせば、台湾人であっても原則として日本の刑事裁判権に服すべきことは明らかであると判断した。したがって、共犯者の裁判権欠如を前提とする弁護側の主張は、その前提を欠いているといえる。
結論
被告人に対する日本の刑事裁判権は認められ、台湾人共犯者の存在によってこれが左右されることはない。
実務上の射程
日本の領土内で発生した犯罪についての裁判権の普遍性を示す。国際的要素を含む事案であっても、条約等による特段の免除がない限り、属地主義原則に基づき日本の裁判権が及ぶことを確認する際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)3030 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】関税法違反と貿易等臨時措置令違反が同一の行為により成立する場合、両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立ち、最も重い刑により処断される。 第1 事案の概要:被告人は、輸入貨物である中双糖及び含密糖の密輸入に関連して、関税法違反および貿易等臨時措置令(後の外国為替及び外国貿易管理法)違反の罪に…
事件番号: 昭和25(あ)2398 / 裁判年月日: 昭和27年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦後の法的過渡期において、法令の定めに基づき特定の地域が外国とみなされる場合、当該地域との間で行われる物品の輸出入は関税法上の規制対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、当時法的地位が特異な状況にあった「a島」との間で物品の移動を行った。これに対し、関税法違反(無許可輸出入等)の罪で起訴された。…
事件番号: 昭和25(あ)1856 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: 棄却
昭和二一年勅令第三一一号聯合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令第一条第八号にいわゆる「前各号の行為」中には同条第一号の聯合国人の犯した罪は含まれない。