判旨
刑事訴訟法433条に基づく特別抗告は、最高裁判所以外の下級裁判所がした決定または命令を対象とするものであり、最高裁判所自らがした決定に対して同条による抗告をすることは許されない。
問題の所在(論点)
最高裁判所がした判決訂正申立て棄却の決定に対し、刑事訴訟法433条に基づき最高裁判所へ抗告を申し立てることが認められるか。同条が定める抗告対象の範囲が問題となる。
規範
刑事訴訟法433条1項は、最高裁判所以外の下級裁判所がした、不服を申し立てることができない決定又は命令に対し、憲法違反又は判例違反を理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる旨を規定している。したがって、同条に基づく抗告の対象は下級裁判所の裁判に限定される。
重要事実
申立人は、最高裁判所が昭和27年11月25日に宣告した住居侵入、強盗殺人、強盗致傷被告事件の判決に対し、判決訂正の申立てを行った。最高裁判所は同年12月16日にこの訂正申立てを棄却する決定を下した。これに対し、申立人はさらに刑事訴訟法433条に基づく抗告(特別抗告)を申し立てた。
あてはめ
本件で申立人が不服を申し立てているのは、最高裁判所第三小法廷が下した判決訂正申立てを棄却する決定である。しかし、刑事訴訟法433条の規定は、その文言上「下級裁判所」の裁判を対象とするものであり、終審裁判所である最高裁判所自身の裁判を対象に含むものではない。したがって、本件申立ては同条の予定する適法な抗告の要件を欠いている。
結論
最高裁判所のした決定に対して刑事訴訟法433条の抗告をすることは許されないため、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和29(し)51 / 裁判年月日: 昭和29年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がなした再審請求棄却の決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てを経ることなく直接特別抗告を申し立てることは、同法433条により許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、強盗致死被告事件の確定判決(福岡高等裁判所)に対し再審請求を行った。これに対し、福岡高等裁判所が再審請求を…
最高裁判所の判断(決定・命令)に対しては、不服申立ての手段としての抗告は認められない。判決については判決訂正の申立て(415条)があるが、決定等については再度の不服申立ては制度上予定されていないことを示す。司法試験においては、特別抗告の対象が「下級裁判所の裁判」に限定される点を確認する基本判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和45(す)318 / 裁判年月日: 昭和46年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がした判決訂正申立棄却決定に対しては、法律上、特別抗告を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、最高裁判所が下した判決(昭和45年(あ)第721号)に対し、判決訂正の申立てを行った。最高裁判所は昭和45年12月10日にこの申立てを棄却する決定を下し…
事件番号: 昭和28(し)94 / 裁判年月日: 昭和29年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所のなした再審請求棄却決定に対しては異議の申立てが可能であるため、これに対する特別抗告は不適法である。 第1 事案の概要:福岡高等裁判所に対し再審請求がなされたが、同裁判所はその請求を棄却する決定を下した。これに対し、請求人が最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の…
事件番号: 昭和33(す)482 / 裁判年月日: 昭和33年11月10日 / 結論: 棄却
上告棄却判決に対する訂正申立棄却決定に対しては異議申立は許されない。
事件番号: 昭和27(し)76 / 裁判年月日: 昭和27年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がした上告申立棄却決定や裁判の執行に関する異議申立却下決定に対しては、当該高等裁判所に異議の申立てをすることが認められているため、最高裁判所への特別抗告をすることは許されない。 第1 事案の概要:被告人が高等裁判所に対して行った上告の申立てに対し、当該高等裁判所は、期間経過後であるとして…