刑訴規則第二一六条、第二二二条の規定は第一審における刑訴第二八四条、第二八五条第一、二項にあたる事件に関するものであつて、控訴審には準用のない規定である。
刑訴規則第二一六条、第二二二条と控訴審への準用の有無
刑訴法284条,刑訴法285条,刑訴法390条,刑訴規則216条,刑訴規則222条
判旨
被告人が第一審において自白し、証拠に同意して反対尋問権を放棄した場合、控訴審において新たにされた証拠調請求を却下することは、特段の事情がない限り、憲法31条、32条、37条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
第一審で反対尋問権を放棄し、自白した被告人が、控訴審で新たに証拠調請求を行った場合に、これを却下することは憲法31条、32条、37条2項に違反するか。刑訴法393条1項但書の該当性が問題となる。
規範
憲法37条2項の証人喚問請求権は、被告人の請求するすべての証人を裁判所が取り調べる義務を負わせるものではない。また、第一審で証拠調請求が可能であったにもかかわらずこれを行わず、権利を放棄したと認められる場合には、控訴審における証拠調請求の義務を定めた刑訴法393条1項但書の規定には該当しない。
重要事実
被告人は第一審公判において、起訴状記載の公訴事実をすべて自白した。検察官が請求した供述書および供述調書についても、被告人および弁護人は証拠とすることに同意し、異議を述べなかった。その後、控訴審において被告人側は新たに証拠調請求を行ったが、原審(控訴審)はこれを却下した。これに対し、被告人側は憲法31条(適正手続)、32条(裁判を受ける権利)、37条2項(証人喚問請求権)違反を理由に特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和24(つ)93 / 裁判年月日: 昭和25年3月6日 / 結論: 棄却
所論は裁判長の被告人に對する個々の尋問に對する被告人の供述が他の共同被告人に不利益であつたにもかかわらず、裁判長がその都度當該他の共同被告人に反對訊問するように注意しなかつた措置又はその共同被告人又は辯護人に對しその都度現實に反對尋問する機會を與えなかつた措置は被告人の證人に對する基本的權利を規定した憲法第三七條第二項…
あてはめ
被告人は第一審において、証人Aに対する反対尋問権を自ら放棄しており、かつ自白も行っている。控訴審で新たに申請した証拠についても、第一審において特に証拠調請求ができなかったと認めるに足りる事由は存在しない。したがって、被告人は第一審で可能であった権利をあえて行使せず放棄したものと評価できる。この場合、原審における請求は、控訴審で取り調べるべき証拠を定めた刑訴法393条1項但書の要件を満たさないため、却下は適法である。
結論
被告人の請求するすべての証人を取り調べる義務はなく、第一審で権利を放棄した事案において控訴審での証拠請求を却下することは合憲である。特別抗告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における証拠調べの範囲を限定する判断枠組み。特に、第一審で反対尋問権を放棄・証拠同意した後の『蒸し返し』的な証拠請求が、憲法上の権利を根拠に認められるわけではないことを明確にしている。刑事実務における控訴審の事後審的性格を補強する論証として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2685 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
記録によつてみると被告人は第一審において犯罪事実を自白し詐欺の犯意を否認しなかつたのである。それゆえ控訴審において被告人は詐欺の犯意を否認し弁護人から所論証人三名を申請して事実の取調を求めたとしてもそれは控訴記録及び第一審で取り調べられた証拠に現われていない事実についての証拠の取調請求であるから結局刑訴第三九三条一項本…
事件番号: 昭和28(し)12 / 裁判年月日: 昭和28年11月24日 / 結論: 棄却
刑訴第四三五条第六号に基く再審の請求にあたり、あらたに発見した証拠として証人の取調を求めている場合でも、その再審の請求が理由があるかどうかを判断するために、その証人の取調をするか、又はこれをしないで、趣意書に添えた証拠書類等及び確定事件記録につき必要と認める調査をするにとどめ、あるいはさらにその証人の取調以外の方法によ…
事件番号: 昭和57(し)34 / 裁判年月日: 昭和57年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べ請求却下決定に対する異議申し立てを棄却する決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:本件は、裁判所が行った証拠調べ請求の却下決定に対し、被告人側が異議を申し立てた事案である。原決定(…