判旨
賄賂として受領した金員が贈賄者に返還されたと認められない場合、当該金員を消費等により任意に処分した受賄者から、その価額を追徴することができる。
問題の所在(論点)
受賄者が収受した賄賂の一部を第三者に渡した場合において、その金員が贈賄者に返還されたと評価できないときに、受賄者から当該金額を追徴することの是非が問題となる。
規範
刑法197条の5(収賄罪の没収・追徴)の適用において、受賄者が収受した賄賂が贈賄者に返還されたものと認められない限り、受賄者がこれを任意に処分したときは、没収することができないため、その価額を追徴しなければならない。
重要事実
被告人Dは収賄の疑いで起訴された。Dは贈賄者BおよびCから渡された金員のうち5万円をAに渡したが、AはBおよびCと共同正犯の関係にはなかった。Dは、この5万円の範囲内である3万6000円を追徴されたことに対し、当該金員は返還されたものと同視すべきであり、追徴は違法であると主張して上告した。
あてはめ
まず、金員を受け取ったAは、贈賄者であるBおよびCと共同正犯の立場になかった。そのため、被告人DがAに渡した5万円は、贈賄側に払い戻された(返還された)ものとは認められない。したがって、当該金員は受賄者である被告人Dによって任意に処分されたものと評価される。このように、賄賂が贈賄者に返還された事実がない以上、その価額である3万6000円を被告人Dから追徴した原判決に違法はない。
結論
被告人Dが収受した賄賂を任意に処分したものとして、その価額を追徴することは適法である。
実務上の射程
収賄罪における追徴の対象を画定する際の判断材料となる。賄賂が贈賄者に「返還」されたといえるためには、単に第三者に渡すだけでは足りず、贈賄側の支配下に戻ったと評価できる客観的事態が必要である。実務上は、第三者が贈賄者の共同正犯か否かが、返還の成否を分ける重要な考慮要素となる。
事件番号: 昭和26(あ)3026 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】収賄者が賄賂を享受した後に、贈賄者に同額の金員を返還したとしても、賄賂そのものを返還したのではない限り、既に享受した利益について追徴される責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、それぞれ贈賄者から現金を受領して収賄した。Aは受領した現金の約2割を費消し、残額を妻が他の預…
事件番号: 昭和27(あ)4916 / 裁判年月日: 昭和29年7月5日 / 結論: 棄却
収受された賄賂者に返還せられ、贈賄者においてこれを費消した場合には、贈賄者よりその額を追徴するのが相当である。