収受された賄賂者に返還せられ、贈賄者においてこれを費消した場合には、贈賄者よりその額を追徴するのが相当である。
贈賄者が返還をうけた賄賂を費消した場合と追徴
刑法197条の4
判旨
収受された賄賂が贈賄者に返還され、贈賄者においてこれを費消した場合には、刑法197条の4に基づき、贈賄者からその価額を追徴することができる。
問題の所在(論点)
収受された賄賂が贈賄者に返還され、贈賄者において費消された場合、刑法197条の5(旧197条の4)に基づき、贈賄者からその額を追徴することは可能か。
規範
刑法197条の5(旧197条の4)は没収または追徴の対象範囲を定めた規定であり、没収不能な場合に「情を知つて」収受した第三者(贈賄者を含む)から追徴を行うことを認めるものである。贈賄者が賄賂の返還を受けてこれを費消した場合、当該贈賄者は収受した賄賂の価額を追徴されるべき対象に含まれる。
重要事実
公務員(収賄者A)が賄賂を受領したが、その後、その賄賂が贈賄者側に返還された。返還を受けた贈賄者は、その賄賂を自ら費消した。この状況において、贈賄者から当該賄賂相当額を追徴することの可否が争点となった。
あてはめ
刑法197条の4(現197条の5)は、没収・追徴の対象範囲を規定するものであり、特定の身分(公務員)に限定して追徴を命じるものではない。本件では、賄賂が一度収賄者に渡った後、再び贈賄者の手に戻り、贈賄者がこれを費消している。この場合、賄賂の現物は存在せず没収不能であるから、その利益を最終的に保持・費消した贈賄者から価額を追徴することは正当である。
結論
贈賄者からその賄賂の額を追徴することは適法である。
実務上の射程
賄賂罪における追徴の対象者が公務員本人に限られないことを示した判例である。特に、贈賄側に賄賂が還流したケースにおいて、実質的に利益を保持している者から剥奪を行うという「不法な利益を保有させない」という没収・追徴の趣旨を重視する場面で活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)951 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
鉄道部内の職員が、鉄道共済組合令に基き、運輸大臣の命によつて国有鉄道共済組合の業務に従事する場合、その業務の執行は、刑法第一九七条にいう同職員の公務員としての職務に属する。