判旨
被告人が複数人で共同して暴行を加えた行為について、それが強制わいせつ罪の構成要件の一部をなすものではなく、単なる暴行に止まる場合には、強制わいせつ罪ではなく暴行罪(又は共同正犯)が成立する。
問題の所在(論点)
数人共同で行われた暴行が、強制わいせつ罪の実行行為の一部(手段としての暴行)と評価されるべきか、あるいは独立した暴行罪等に止まるべきかという、事実認定を前提とした罪数・構成要件該当性の判断が問題となった。
規範
特定の犯罪(強制わいせつ罪等)の実行行為の一部を構成すると評価される行為であっても、事実認定として当該犯罪の構成要件に該当する一連の行為の一部とは認められず、単なる暴行等の行為に止まる場合には、その行為自体について刑事責任を負う。
重要事実
被告人が数人と共同して暴行をなした事実が認められたが、弁護人はこれが刑法176条(当時の強制わいせつ罪)の一部であると主張して判例違反を訴えた事案である。
あてはめ
原審が適法に認定した事実によれば、被告人の本件行為は、強制わいせつ罪の所為の一部を構成するものではなく、単に「数人共同して暴行をなした行為」に止まるものと認められる。したがって、強制わいせつ罪の成立を前提とする弁護人の主張は、認定事実に反するものである。
結論
被告人の行為は、強制わいせつ罪の一部ではなく数人共同の暴行に止まるため、上告は棄却される。
実務上の射程
本決定は、一連の行為が強制わいせつ等の複合的な犯罪の一部をなすか、あるいは独立した暴行等の単純な犯罪に止まるかは事実認定の問題であることを示している。答案上は、暴行・脅迫が特定の目的(わいせつ行為等)に向けられたものか、単なる独立した違法行為かを区別する際の認定の論拠として機能する。
事件番号: 昭和26(れ)1732 / 裁判年月日: 昭和27年7月11日 / 結論: 破棄自判
数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められるが、強姦罪について告訴が適法に取り消された場合、同罪の手段たる共同暴行を「暴力行為等処罰に関する法律」第一条違反として処罰することは違法である。
事件番号: 昭和27(あ)2976 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
被告人四名が犯意を共通し共同して判示上京税務署員七名に対し各別にそれぞれ暴力行為等処罰に関する法律一条一項の違反行為を為し因て右署員中三名に対し各別にそれぞれ傷害を与えたような場合には右各被告人に対しそれぞれ四個の暴力行為等処罰に関する法律違反と三個の傷害罪が成立する。
事件番号: 昭和38(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和40年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書の「暴力の行使」に該当するか否かは、当該行為が社会通念上許容される限度を超えるものであるか否かによって判断される。社会通念上の限度を超えると認められる場合は、刑法上の正当行為(同法35条)としての違法性阻却を認めない。 第1 事案の概要:被告人らの原判示所為(具体的な事案…
事件番号: 昭和57(あ)254 / 裁判年月日: 昭和57年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別件逮捕・勾留の違法性が主張されたとしても、原判決が証拠の信用性判断の過程でその目的の存否に言及したにとどまる場合には、捜査自体の憲法適合性を判断したものとはいえず、違憲を理由とする適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が逮捕・勾留された際、その目的が不当であったとして弁護人が違…
事件番号: 昭和27(あ)4473 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合等の活動が刑法上の正当行為(刑法35条)として違法性を阻却されるためには、その行為が憲法28条の趣旨に照らし、正当な団体交渉の目的達成のために必要かつ相当な範囲内で行われることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らの所為が刑法上の犯罪構成要件に該当する一方で、被告人側は当該行為が憲法2…