被告人四名が犯意を共通し共同して判示上京税務署員七名に対し各別にそれぞれ暴力行為等処罰に関する法律一条一項の違反行為を為し因て右署員中三名に対し各別にそれぞれ傷害を与えたような場合には右各被告人に対しそれぞれ四個の暴力行為等処罰に関する法律違反と三個の傷害罪が成立する。
数人共同して数人に対し各別にそれぞれ暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の違反行為をなし因てその中一部の者に対し各別にそれぞれ傷害を与えた場合の罪数
暴力行為等処罰ニ関スル法律1条1項,刑法204条
判旨
数名の者が共謀の上、複数の被害者に対して各別に暴力行為を加え、そのうち一部の被害者に傷害を負わせた場合、傷害を負わなかった被害者に対する暴力行為等処罰に関する法律1条1項違反の罪と、負わせた被害者に対する傷害罪がそれぞれ独立して成立する。
問題の所在(論点)
数人の共同正犯が、複数の被害者に対して集団的暴行を加え、その一部に傷害を負わせた場合、暴力行為等処罰に関する法律1条1項違反の罪と傷害罪の罪数はどのように解されるべきか。特に傷害罪が暴力行為の罪に吸収されるかどうかが問題となる。
規範
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の違反行為(集団的暴行等)に際し、特定の被害者に対して傷害の結果を生じさせた場合、その傷害罪は当該違反罪の構成要件の外にあり、吸収されることなく別個に成立する。また、複数の被害者に対して各別に暴行が行われた場合には、被害者の数に応じた罪数が成立する。
重要事実
被告人A、B、C及び共同被告人Dの4名は、共謀の上、上京税務署員7名に対し、各別に暴力行為等処罰に関する法律1条1項に該当する暴行を加えた。その結果、7名のうちE、J、Kの3名に対して傷害を負わせ、他の4名に対しては傷害を負わせるに至らなかった。
事件番号: 昭和27(あ)2976 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】複数の税務署員に対し共同して暴行・傷害を加えた場合、傷害に至らない暴行については暴力行為等処罰に関する法律1条1項が、傷害に至ったものについては刑法204条がそれぞれ独立して成立し、これらは併合罪の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人Pおよび共同被告人3名は、共謀の上、上京税務署員7名に対し、各…
あてはめ
本件では、被告人らは7名の署員に対し各別に暴行を加えている。このうち、傷害を負わなかった4名の署員に対する行為については、暴力行為等処罰に関する法律1条1項違反の罪が4個成立する。他方、傷害を負わせた3名の署員に対する行為については、発生した傷害の結果は暴力行為の構成要件を超えている。したがって、これら3名に対する行為については刑法204条の傷害罪が3個成立し、前述の暴力行為の罪に吸収されることはない。これらはそれぞれ独立した犯罪として構成される。
結論
被告人らに対し、4個の暴力行為等処罰に関する法律違反と、3個の傷害罪が成立するとした原判決の判断は正当である。
実務上の射程
特別法(暴力行為等処罰法)と一般法(刑法・傷害罪)の重畳的適用に関する射程を示す。1個の暴行から傷害が生じた場合の罪数関係(1税務署員への暴行で傷害が生じた場合に傷害罪のみが成立するか、あるいは観念的競合となるか等)を直接論じたものではなく、複数の被害者に対する個別的暴行が存在する場合の罪数判断として活用すべきである。
事件番号: 昭和32(あ)1568 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
暴力行為等処罰に関する法律一条一項の犯罪は、同条項列挙の罪の特別加重犯であるから、多衆の威力を示し又は数人共同して刑法二〇八条の罪を犯し因つて人を傷害した場合は、刑法二〇四条の罪のみが成立し、同法律一条一項の違反罪は成立しないものと解するを相当とする。
事件番号: 昭和27(あ)770 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が複数人で共同して暴行を加えた行為について、それが強制わいせつ罪の構成要件の一部をなすものではなく、単なる暴行に止まる場合には、強制わいせつ罪ではなく暴行罪(又は共同正犯)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が数人と共同して暴行をなした事実が認められたが、弁護人はこれが刑法176条(当時の…
事件番号: 昭和28(あ)1404 / 裁判年月日: 昭和28年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項における「多衆の威力」を示した暴行の成否について、事実認定に基づき多衆の威力の活用が認められる場合には同条が適用される。 第1 事案の概要:被告人両名は、多人数で集合し、その多衆の威力を示す態様によって被害者に対し暴行を加えた。第一審判決はこの事実を認定し、被告人…
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。