判旨
複数の税務署員に対し共同して暴行・傷害を加えた場合、傷害に至らない暴行については暴力行為等処罰に関する法律1条1項が、傷害に至ったものについては刑法204条がそれぞれ独立して成立し、これらは併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
数人の被害者に対し、暴力行為等1条1項に該当する暴行と、傷害罪に該当する傷害行為を併せて行った場合、各罪の罪数関係はどのように解されるべきか。特に傷害の結果が暴力行為等の罪に吸収されるかが問題となる。
規範
特定の暴力行為が傷害の結果を生じさせた場合、当該傷害は暴力行為等処罰に関する法律(以下「暴力行為等」)1条1項の構成要件の外部にあり、同法に吸収されない。したがって、傷害に至らない暴行罪(暴力行為等)と傷害罪がそれぞれ成立し、数人の被害者に対し個別の犯罪を構成する場合、これらは併合罪(刑法45条前段)として処断される。
重要事実
被告人Pおよび共同被告人3名は、共謀の上、上京税務署員7名に対し、各別に暴行を加えた。このうち3名については傷害を負わせるに至った。第一審および原審は、傷害に至らなかった4名に対する暴力行為等1条1項違反の罪と、傷害を負わせた3名に対する傷害罪(刑法204条、60条)の成立を認め、これらを併合罪として処断したため、被告人が上告した。
あてはめ
本件では、被告人らは7名の被害者に対し、それぞれ別個に暴行を加えている。暴力行為等1条1項の罪は、特定の暴行行為を処罰するものであるが、その暴行の結果として傷害が生じた場合、傷害罪は当該暴力行為の構成要件を越える別個の犯罪類型である。判決文によれば、傷害の結果は「原因たる違反罪(暴力行為等)の構成要件の外」にあるため、吸収関係は認められない。したがって、被害者ごとに成立する4個の暴力行為等違反と、3個の傷害罪は、それぞれ独立した犯罪として成立すると評価される。
結論
傷害を負わせた被害者については傷害罪が、それ以外の被害者については暴力行為等処罰に関する法律違反が成立し、これらは併合罪となる。原判決の判断は正当である。
事件番号: 昭和27(あ)2976 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
被告人四名が犯意を共通し共同して判示上京税務署員七名に対し各別にそれぞれ暴力行為等処罰に関する法律一条一項の違反行為を為し因て右署員中三名に対し各別にそれぞれ傷害を与えたような場合には右各被告人に対しそれぞれ四個の暴力行為等処罰に関する法律違反と三個の傷害罪が成立する。
実務上の射程
特別法(暴力行為等)と一般法(刑法傷害罪)の罪数関係を示す。一連の行為で複数の被害者に異なる結果(暴行・傷害)を生じさせた場合、被害者ごとに罪を構成し、かつ、重い傷害の結果については特別法の暴行罪に吸収されず、刑法の傷害罪が適用されることを明示する際に有用である。
事件番号: 昭和32(あ)1568 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
暴力行為等処罰に関する法律一条一項の犯罪は、同条項列挙の罪の特別加重犯であるから、多衆の威力を示し又は数人共同して刑法二〇八条の罪を犯し因つて人を傷害した場合は、刑法二〇四条の罪のみが成立し、同法律一条一項の違反罪は成立しないものと解するを相当とする。
事件番号: 昭和28(あ)1404 / 裁判年月日: 昭和28年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項における「多衆の威力」を示した暴行の成否について、事実認定に基づき多衆の威力の活用が認められる場合には同条が適用される。 第1 事案の概要:被告人両名は、多人数で集合し、その多衆の威力を示す態様によって被害者に対し暴行を加えた。第一審判決はこの事実を認定し、被告人…
事件番号: 昭和27(あ)770 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が複数人で共同して暴行を加えた行為について、それが強制わいせつ罪の構成要件の一部をなすものではなく、単なる暴行に止まる場合には、強制わいせつ罪ではなく暴行罪(又は共同正犯)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が数人と共同して暴行をなした事実が認められたが、弁護人はこれが刑法176条(当時の…
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。