数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められるが、強姦罪について告訴が適法に取り消された場合、同罪の手段たる共同暴行を「暴力行為等処罰に関する法律」第一条違反として処罰することは違法である。
強姦罪について告訴が適法に取消された場合に、同罪の手段たる共同暴行のみを処罰し得るか
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,刑法181条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条5号
判旨
親告罪である強姦罪の手段として行われた暴行が、告訴の欠如や取消により強姦罪として公訴提起できない場合、その暴行部分のみを抽出して暴力行為等処罰に関する法律違反等として起訴することは許されない。
問題の所在(論点)
親告罪である強姦罪(当時)につき適法な告訴の取消しがあった場合、その構成要件の一部である暴行行為のみを抽出して、非親告罪である暴力行為等処罰に関する法律違反として公訴を提起することは認められるか。
規範
強姦罪は暴行・脅迫と姦淫が合一して構成される単一の犯罪であり、その手段たる暴行等は強姦罪の一部を構成する。同罪が親告罪とされる趣旨は、公判を通じて被害者の名誉を傷つけ多大な不利益を与えることを避けるため、被害者の意思感情を尊重する点にある。したがって、強姦罪としての訴追条件を欠く場合に、その構成要件の一部である暴行・脅迫のみを抽出して別罪で起訴することは、法の趣旨を潜脱するものであり許されない。
重要事実
被告人両名は他の5名と共謀し、路上で姉妹であるAおよびBに対し、覆面をした上で無理やり連行し、押し倒して裸にするなどの暴行を加え、輪姦した。被害者らは当初強姦罪の告訴を提起したが、公訴提起前にこれを取り消した。検察官は、告訴取消しの翌日、被告人らの行為を「共同暴行」の点に絞り、暴力行為等処罰に関する法律違反として起訴した。
事件番号: 昭和27(あ)770 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が複数人で共同して暴行を加えた行為について、それが強制わいせつ罪の構成要件の一部をなすものではなく、単なる暴行に止まる場合には、強制わいせつ罪ではなく暴行罪(又は共同正犯)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が数人と共同して暴行をなした事実が認められたが、弁護人はこれが刑法176条(当時の…
あてはめ
本件の共同暴行は、証拠上明らかに強姦の手段として行われたものであり、強姦罪の一部を構成する。強姦罪を親告罪とした立法趣旨に照らせば、犯罪の凶悪性(犯情の悪質さ)を理由にこの区別を曖昧にすることは許されない。また、仮に暴行罪等としての起訴を認めれば、審理の過程で結局は強姦の事実が公にされ、被害者の名誉・感情を保護するという親告罪の目的が達成不可能となる。したがって、理論的にも実務的にも、強姦の手段たる暴行のみを分離して起訴することは不合理であり、違法である。
結論
告訴の取消しにより強姦罪としての公訴権が消滅している以上、その手段である暴行のみを抽出した起訴も不適法であり、公訴棄却を免れない。
実務上の射程
親告罪の趣旨を潜脱するような「一部抽出による起訴」を否定した重要判例である。強姦罪(現・不同意性交等罪)は非親告罪化されたが、他の親告罪(名誉毀損罪等)とその手段となる行為の関係、あるいは訴追条件の潜脱が問題となる場面での解釈指針として、今日でも射程を有し得る。
事件番号: 昭和27(さ)1 / 裁判年月日: 昭和28年12月16日 / 結論: 棄却
数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められる場合に、強姦罪についての告訴が適法に取消されても同罪の手段たる共同暴行を暴力行為等処罰に関する法律第一条違反として処罰することは違法ではない。
事件番号: 昭和28(あ)4321 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親告罪において、被害者が未成年者である場合、その法定代理人は独立して告訴権を行使することができる(刑事訴訟法231条1項)。本件では被害者の父による告訴が有効であり、訴訟条件を欠くものではない。 第1 事案の概要:被告人が親告罪に該当する罪を犯したとされる事案において、昭和27年2月20日、被害者…
事件番号: 昭和46(あ)1190 / 裁判年月日: 昭和47年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単独正犯として起訴された事案について、訴因変更の手続を経ることなく共同正犯として認定することは、判決が訴因と異なる事実を認定したものではない場合には許容される。 第1 事案の概要:被告人は単独正犯の訴因により起訴された。原審(控訴審)は、被告人の行為について、訴因変更の手続を経ることなく事実認定を…
事件番号: 昭和27(あ)4864 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 棄却
昭和二六年四月当時佐賀県a町大字b字c駐在所勤務の巡査に対し同駐在所附近で「売国奴の番犬、A巡査をたたき出せ」と題し、「……たしかに、Aは売国奴の番犬だ!我々愛国者人民は近き将来に必ず勝利するのだ、かかる売国奴とその手先どもの行為は、来るべきあの有名な人民裁判によつて明らかにサバカレ処断されるであろう……」と書いた謄写…