数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められる場合に、強姦罪についての告訴が適法に取消されても同罪の手段たる共同暴行を暴力行為等処罰に関する法律第一条違反として処罰することは違法ではない。
強姦罪について告訴がない場合に同罪の手段たる共同暴行のみを処罰することができるか
暴力行為等処罰に関する法律1条,刑法177条,刑法180条,旧刑訴法258条,旧刑訴法267条,旧刑訴法364条6号,旧刑訴法516条
判旨
検察官が非親告罪である暴力行為等処罰に関する法律1条違反として起訴した以上、裁判所は公訴事実を逸脱して強姦罪(親告罪)の成否や告訴の有無を審理し、公訴棄却の判決をすることはできない。
問題の所在(論点)
検察官が非親告罪(法1条違反)として起訴した事実が、実態として親告罪(強姦罪)の一部を構成する場合、裁判所は公訴事実の範囲を超えて告訴の欠如を理由に公訴棄却できるか。
規範
検察官が特定の公訴事実(非親告罪)を起訴した際、裁判所は公訴事実の範囲を逸脱して、起訴されていない親告罪の構成要素や告訴の有無を職権で審理・認定することは許されない。非親告罪である暴力行為等は、必ずしも強姦罪と不可分の一体を成すものではない。
重要事実
被告人らは、共同して暴行を働いたとして暴力行為等処罰に関する法律(以下「法」)1条違反で起訴された。第一審は、当該暴行が強姦罪の構成要素であって不可分の関係にあり、強姦罪について告訴が取り消されていることを理由に公訴棄却の判決をした。これに対し、控訴審は法1条違反の成立を認め有罪判決を言い渡し、確定した。検事総長は、同種事案の別判決との齟齬を理由に、本確定判決の破棄を求めて非常上告を申し立てた。
事件番号: 昭和26(れ)1732 / 裁判年月日: 昭和27年7月11日 / 結論: 破棄自判
数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められるが、強姦罪について告訴が適法に取り消された場合、同罪の手段たる共同暴行を「暴力行為等処罰に関する法律」第一条違反として処罰することは違法である。
あてはめ
法1条違反は非親告罪であり、数人共同の暴行をもって独立して成立する。検察官が姦淫の事実に触れず法1条違反として起訴した以上、審理の対象は当該公訴事実に限定される。裁判所が職権で起訴されていない強姦罪の成否や告訴の取消しを認定し、公訴棄却することは、訴因による審判範囲の画定に反する。また、親告罪の趣旨は被害者の名誉保護にあるが、公判で強姦の事実を暴くことはかえって被害者の名誉を毀損し、法の趣旨に逆行する。
結論
原確定判決が法1条違反の成立を認めたことに法令違反は認められないため、非常上告を棄却する。
実務上の射程
訴因の拘束力および親告罪の告訴の要否に関する射程を持つ。検察官に訴因選択の裁量があることを前提に、非親告罪として起訴された事実に親告罪の性質が混在していても、裁判所は起訴された範囲で審判すべきであることを示す。実務上、強姦等の手段としての暴行のみを法1条違反で処理する運用の妥当性を支える判例である。
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…
事件番号: 昭和60(あ)447 / 裁判年月日: 昭和60年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官以外の者が地方裁判所の第一審判決に対し最高裁判所へ跳躍上告を行うためには、当該判決において憲法違反や条例等の法律違反の判断が示されている場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、地方裁判所のした第一審判決に対し、最高裁判所へ直接上告(跳躍上告)を申し立てた事案。しかし、対象と…
事件番号: 昭和26(れ)1984 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
検事が犯行後三年五月を経過したときに恐喝罪として公訴を提起した公訴事実を、裁判所が暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきものである。
事件番号: 昭和28(あ)4321 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親告罪において、被害者が未成年者である場合、その法定代理人は独立して告訴権を行使することができる(刑事訴訟法231条1項)。本件では被害者の父による告訴が有効であり、訴訟条件を欠くものではない。 第1 事案の概要:被告人が親告罪に該当する罪を犯したとされる事案において、昭和27年2月20日、被害者…