検事が犯行後三年五月を経過したときに恐喝罪として公訴を提起した公訴事実を、裁判所が暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきものである。
恐喝罪として起訴された事実を暴力行為等処罰に関する法律違反と認定する場合と公訴の時効
旧刑訴法281条,旧刑訴法363条,刑法249条,暴力行為等処罰に関する法律1条
判旨
起訴された犯罪事実(恐喝罪)が証明されず、より軽微な別罪(暴力行為等処罰法違反)のみが認められる場合、公訴時効の完成は実際に認定される軽微な罪の法定刑を基準に判断される。起訴状の罪名にかかわらず、起訴時点で当該軽微な罪の時効期間を経過していれば免訴を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
起訴状に記載された罪名(恐喝罪)と、実際に認定された罪名(暴処法違反)が異なり、かつ認定された罪の時効期間が起訴前に経過していた場合、公訴時効の成否をどちらの罪を基準に判断すべきか。
規範
公訴時効の期間は、起訴状に記載された罪名ではなく、裁判所が認定した実際の犯罪事実に適用される法定刑を基準として算定される。起訴状記載の重い罪(例:恐喝罪)については犯罪の証明がなく、より軽い罪(例:暴処法違反)のみが成立する場合において、起訴時点で後者の時効期間が経過していれば、刑訴法337条4号(旧刑訴法363条4号)に基づき免訴を言い渡さなければならない。
重要事実
被告人は、建物売買を巡り子分らと共同して被害者に暴行・脅迫を加えたとして、恐喝罪で起訴された。しかし、裁判所は恐喝の事実は認められないとし、暴行・脅迫の事実のみを認めて暴力行為等処罰に関する法律1条1項違反を適用した。当該行為が行われたのは昭和19年4月頃であり、公訴が提起されたのは約3年5か月後の昭和22年10月22日であった。暴処法1条1項の法定刑(当時)に対する時効期間は3年であったが、原審は有罪判決を下した。
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…
あてはめ
本件で認定された事実は暴力行為等処罰に関する法律1条1項(3年以下の懲役または500円以下の罰金)に該当し、その時効期間は3年である。被告人の行為から起訴までには3年5か月が経過しており、起訴時点で暴処法違反としての時効は既に完成している。たとえ起訴状の罪名が時効期間の長い恐喝罪であったとしても、同罪の証明がない以上、認定される罪の法定刑に基づき時効完成を認めるべきである。したがって、本件は時効完成後に公訴が提起されたものといえる。
結論
時効完成により免訴とされるべきである。原判決を有罪とした原審の判断は法令違反であり、破棄を免れない。
実務上の射程
訴因変更を経て、または訴因変更手続を経ずにより軽い罪を認定する場合の公訴時効の基準を示す。検察官が時効回避のために重い罪で起訴したとしても、実体判断として軽い罪のみが認められるのであれば、当該軽い罪の時効期間によって公訴の適法性が左右されることを意味する。
事件番号: 昭和29(あ)1745 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる法令違反を理由とする上告は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。また、職権による判決破棄事由である同法411条の適用も、記録上認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判の判決に対し上告を申し立てた。弁護人が提出した上告趣意の内容は、単なる法令…
事件番号: 昭和27(さ)1 / 裁判年月日: 昭和28年12月16日 / 結論: 棄却
数人が婦女に対し共同して暴行を加え姦淫した事実が認められる場合に、強姦罪についての告訴が適法に取消されても同罪の手段たる共同暴行を暴力行為等処罰に関する法律第一条違反として処罰することは違法ではない。
事件番号: 昭和27(あ)4864 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 棄却
昭和二六年四月当時佐賀県a町大字b字c駐在所勤務の巡査に対し同駐在所附近で「売国奴の番犬、A巡査をたたき出せ」と題し、「……たしかに、Aは売国奴の番犬だ!我々愛国者人民は近き将来に必ず勝利するのだ、かかる売国奴とその手先どもの行為は、来るべきあの有名な人民裁判によつて明らかにサバカレ処断されるであろう……」と書いた謄写…
事件番号: 昭和54(あ)396 / 裁判年月日: 昭和54年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による公訴の提起が、適正な裁量基準を逸脱し、被告人の属性のみを重視して不当な差別の意図でなされたと認められない限り、公訴権の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団組員であることを理由に、公訴の提起がなされた事案。弁護人は、検察官が被告人の属性のみを重視し、不当な差別の意図をも…