判旨
被告人に国選弁護人の報酬等の訴訟費用を負担させることは、憲法37条3項の保障する弁護権を侵害するものではなく、合憲である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、国選弁護人に支給された報酬等の訴訟費用を被告人に負担させることが、憲法37条3項(弁護人依頼権)に抵触し、違憲とならないか。
規範
国選弁護人の報酬を含む訴訟費用を被告人に負担させる制度は、刑事訴訟法181条1項に基づき、裁判所の裁量によって命じられるものであり、これが直ちに弁護を受ける権利を実質的に否定するものとは解されない。
重要事実
被告人は第一審において有罪判決を受け、その際に訴訟費用の負担を命じられた。被告人は、国選弁護人の報酬等の費用負担を命じることは、憲法37条3項が保障する「被告人が自らこれを補充することができないときは、国でこれを附する」との規定に反し違憲であるとして上告した。
あてはめ
最高裁判所は、昭和25年6月7日の大法廷判決を引用し、被告人に国選弁護人の報酬等の負担を命じることは憲法に違反しないとの判断を維持した。本件記録によれば、第一審が命じた訴訟費用に証人費用は含まれておらず、国選弁護人の報酬等の負担についても、憲法37条3項の趣旨を没却するものではない。また、原判決(控訴審)が訴訟費用の負担を命じていない以上、控訴審で主張しなかった第一審の違憲性を新たに上告審で争うことは適法な上告理由に当たらない。
結論
被告人に国選弁護人の報酬等の訴訟費用を負担させることは合憲であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟費用の負担を命じる裁判(刑訴法181条)の合憲性を確認した射程の長い判例である。答案上は、貧困等の理由で費用負担が事実上不可能な場合には「特段の事情」として執行免除等の検討が必要となるが、制度自体は合憲であることを前提に論述すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)3436 / 裁判年月日: 昭和30年8月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項は被告人の弁護人依頼権と国選弁護制度を保障するが、弁護費用等の負担主体は憲法の直接関知しない事柄であり、法律により刑の言渡しを受けた被告人に訴訟費用の負担を命じることは合憲である。 第1 事案の概要:被告人は刑事裁判において刑の言渡しを受けたが、原判決はこれに際し、第一審公判における…
事件番号: 昭和29(あ)4166 / 裁判年月日: 昭和30年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に訴訟費用の負担を命じることは、憲法37条2項後段が規定する証人喚問権等の保障に反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪の判決を受け、併せて訴訟費用の負担を命じられた。これに対し、被告人側は、被告人に訴訟費用を負担させることは、憲法37条2項後段が保障する被告人の権利を侵害…