判旨
公務員が転職した後に、過去の職務に関して賄賂を収受した場合であっても、単純収賄罪(刑法197条1項前段)が成立する。公務員としての身分を有している限り、賄賂に係る職務を現に担当している必要はない。
問題の所在(論点)
公務員が職務の変更(転職)により、過去に担当していた職務に関する賄賂を収受した場合、刑法197条1項前段の単純収賄罪が成立するか。すなわち、収賄罪の成立に「職務の現担任性」が必要か。
規範
公務員が、公務員としての身分を保持したまま別の職務に転職した場合、前の職務に関して賄賂を収受することは収賄罪を構成する。この際、収賄の対象となる職務を現に担当(担任)していることは要件とされない。
重要事実
被告人は公務員の身分を有していたが、過去に担当していた職務に関し、他の部署へ転職した後に賄賂を収受した。弁護人は、収賄罪の成立には賄賂に関する職務を現に担当している必要があると主張し、刑法の解釈誤りを理由に上告した。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和28年4月25日決定等)を引用し、公務員が転職した後に前の職務に関し賄賂を収受するときは収賄罪を構成すると判示した。被告人が賄賂収受時点で公務員の身分を有している以上、その対象となる特定の事務を現に担当しているか否かは、収賄罪の成立を左右しないと解される。
結論
公務員が転職後、前の職務に関し賄賂を収受しても、公務員である限り収賄罪が成立する。したがって、本件上告は棄却された。
実務上の射程
単純収賄罪(197条1項前段)における「職務」の範囲を確定する際の重要判例である。公務員が退職した後の収賄(197条の3第3項)とは異なり、公務員の身分を維持したままの部署異動であれば、過去の職務であっても「その職務」に含まれることを明示したものとして答案に活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2339 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員が職務を異にする他の職に転任した場合であっても、当該公務員がその身分を継続している以上、旧職の職務に関して賄賂を収受する行為は刑法197条1項前段の収賄罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、当初世田谷税務署B課C係において勤務していた。その後、被告人は公務員の身分を保持したまま、京橋税…