判旨
記録上の弁護人選任書が原本でなく控である場合でも、弁護人が現に選任され活動している実体がある以上、訴訟手続の違憲・違背には当たらない。
問題の所在(論点)
記録上の弁護人選任書が原本ではなく控である場合に、弁護人の選任手続に重大な違法(刑訴法405条、411条等)があるといえるか。
規範
弁護人選任の効力については、書面の形式的な不備(原本か控か等)のみをもって直ちに判断すべきではなく、被告人による選任の意思と、選任された弁護人による実際の弁護活動の有無という実質面を考慮して判断すべきである。
重要事実
上告人が、記録に綴られている弁護人選任書が原本ではなく控であり、裁判長の印もないことを理由に、訴訟手続の違憲および違背を主張して上告した事案。
あてはめ
記録に綴られた書面が原本の控であるとしても、それは事務手続上の性質によるものであって当然の帰結である。また、現に記録上、弁護士が弁護の任に当たっていることが認められる。そうであれば、弁護人依頼権を侵害するような実質的な手続違背が存在するとは認められない。
結論
本件訴訟手続に違憲または違背があるとは認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
弁護人選任という重要な訴訟行為であっても、書面上の些末な形式的不備(原本の欠如等)を理由に手続全体を無効とすることは困難であることを示している。答案作成上は、手続違背の主張が認められるためには、実質的な防御権の侵害があるか否かという視点から検討すべきであるという一般論の補強に活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)2522 / 裁判年月日: 昭和28年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人選任届に代筆の事由が附記されていない刑事訴訟規則上の瑕疵があっても、当該弁護人が公判で異議なく弁論し、被告人も異議を述べていない場合には、当該選任届は無効ではない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人選任届および主任弁護人届には被告人の氏名が記載されていたが、筆跡対照の結果、被告人の自署ではな…