判旨
被告人の行為が包括一罪を構成する場合、公訴提起の効力は当該一罪の全部に及ぶため、起訴状に直接記載のない事実を判示しても不告不理の原則(刑事訴訟法378条3号参照)には反しない。
問題の所在(論点)
公訴状に明示されていない個別の事実について、裁判所が判示することが不告不理の原則に抵触するか。具体的には、包括一罪の一部として起訴された事案において、起訴状に記載のない他の事実を判決で認定することが許されるか。
規範
被告人の個々の行為が社会通念上、包括して一罪と認められる関係にある場合には、公訴の提起はその犯罪事実の全部に対して効力を生じる。したがって、審判の請求があったものと認められ、裁判所がその一部について判示しても、審判請求を受けない事件を審理した違法(不告不理の原則違反)は認められない。
重要事実
被告人が特定の者に対する注射行為および被告人方以外の場所での注射行為を行った。第一審判決は、公訴状に記載された範囲を超えて、これらの行為についても認定・判示した。被告人側は、控訴審および上告審において、これらが審判請求を受けていない事件を審判した違法(理由の食い違い)があるとして争った。
あてはめ
被告人が行った注射行為等は、その性質上、包括して一罪を構成するものと認められる。このように包括一罪の関係にある場合、検察官による公訴提起の効力は、当該一罪を構成する事実の全部に及ぶものと解される。したがって、起訴状に直接の記載がないAに対する注射行為や特定の場所外での行為についても、公訴の範囲に含まれており、裁判所がこれらを審理・判断することは、不告不理の原則に反するものではない。
結論
被告人の所為は包括して一罪であり、その全部につき審判の請求があったものと認められるため、第一審判決に違法はなく、上告は棄却される。
事件番号: 昭和26(あ)3947 / 裁判年月日: 昭和28年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑の判断にあたり、公訴提起されていない別罪の事実を「被告人の情状」の一部として考慮することは、不告不理の原則や憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Bは、本件公訴事実以外にも同種の犯罪を犯し、かつ未遂ではあったものの堕胎手術の要請を受けて実施した事実があった。原判決は量刑の当…
実務上の射程
包括一罪(常習犯や営業犯等)において、訴因として明示された事実以外の余罪的事実を判決で認定できるかの限界を示す。実務上は、訴因変更の手続きを要さずに審判の対象となり得る範囲を確定する際に、公訴の効力の客観的範囲の議論として引用される。
事件番号: 昭和37(あ)416 / 裁判年月日: 昭和39年5月7日 / 結論: 棄却
原判決の確定しているパスハツピと称する水薬は、薬事法第二条第一項第二号所定の「医薬品」にあたり、被告人等が疾病治療の目的でこれを患者の患部に塗布し又は患者をして持つ帰つて塗布させるためにこれを交付した行為は、所論あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和二二年法律第二一七号)附則第一九条第一項による届出にかかる医…
事件番号: 昭和25(あ)3488 / 裁判年月日: 昭和27年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】医師法17条にいう「業」とは、反復継続の意思をもって医行為を行うことを指し、営利の目的(生活上の資料を得る目的)や報酬の有無は、その成立を左右しない。 第1 事案の概要:被告人が医術を業とする目的で医行為を行ったとされる事案において、原判決は被告人の行為を医行為と認定した。しかし、原判決が当該行為…