判旨
強制わいせつ罪(刑法176条)と強姦罪(同177条)の区別に関し、行為者に姦淫の目的が認められない場合には、強姦未遂罪ではなく強制わいせつ罪が成立する。
問題の所在(論点)
姦淫の目的が認められない暴行・脅迫によるわいせつ行為について、強姦未遂罪(現・強制性交等未遂罪)ではなく強制わいせつ罪(現・不同意わいせつ罪)が成立するか。
規範
刑法176条の強制わいせつ罪と、同177条の強姦罪(当時)の成否の区別については、行為者の主観的な意図、特に「姦淫の目的」の有無が重要な判断基準となる。姦淫の目的が認定できない場合には、強姦未遂罪を構成することはない。
重要事実
被告人が被害者に対してわいせつな行為に及んだ事案。弁護人は、本件は強姦罪(刑法177条)の未遂罪に該当すべきであり、強制わいせつ罪(同176条)には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
原判決においては、被告人が本件行為に及ぶに際して「姦淫の目的」があったとは認定されていない。そのため、姦淫を目的とする強姦罪の未遂を認める前提を欠いており、刑法176条を適用した判断に判例違反の過誤はない。
結論
本件は強姦の未遂罪ではなく、強制わいせつ罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
性犯罪における罪名選択において、行為者の主観的意図(性交等の目的の有無)が罪数の分水嶺となることを示した。なお、現行刑法下では強制性交等罪が不同意性交等罪等に改正されているが、わいせつ行為と性交等行為の区別に関する基本論理として参照し得る。
事件番号: 昭和25(あ)2416 / 裁判年月日: 昭和27年4月1日 / 結論: 棄却
刑法第一七五条にいわゆる「猥褻」とは、徒らに性慾を興奮又は刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反することをいう。