刑法第一七五条にいわゆる「猥褻」とは、徒らに性慾を興奮又は刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反することをいう。
刑法第一七五条にいわゆる「猥褻」の意義
刑法175条
判旨
刑法175条の「わいせつ」とは、徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することをいう。
問題の所在(論点)
刑法175条に規定される「わいせつ」の意義が、従来の判例(昭和26年5月10日判決)と同様の解釈を維持すべきか否か。
規範
刑法175条にいう「わいせつ」概念は、以下の3要素から成る。①徒らに性欲を興奮又は刺激させるものであること、②普通人の正常な性的羞恥心を害するものであること、③善良な性的道義観念に反するものであること。
重要事実
被告人が行った行為又は作成・配布した文書等が刑法175条に該当するかが争われた事案であるが、具体的な事実関係(どのような書籍や図画であったか等)については本判決文からは不明である。原審が「わいせつ」の定義に基づき有罪判決を下したのに対し、弁護人が独自の解釈に基づき上告したものである。
あてはめ
事件番号: 昭和57(あ)165 / 裁判年月日: 昭和59年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条の「わいせつ」概念は罪刑法定主義に反せず、同条による処罰は表現の自由等を保障する憲法21条、19条、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、刑法175条に基づきわいせつ文書の出版等の罪に問われた事案。弁護人は、同条が読書の自由(憲法21条)や思想の自由(同19条)を侵害し、適…
最高裁判所は、原判決の判断枠組みが「わいせつ」に関する確立された判例と同旨であることを確認した。弁護人が主張する独自の解釈は採用し得ず、記録を精査しても刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき事由は認められない。したがって、本件における具体的な表現物も、上記「わいせつ」の3要素に該当すると評価されるべきである。
結論
刑法175条の「わいせつ」概念は判例の示す3要素(性欲刺激、羞恥心侵害、道義反)により定義されるべきであり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決はいわゆる「わいせつ三要素」を確立した判例を再確認したものである。司法試験の答案作成においては、憲法21条1項(表現の自由)の制限が問題となる場面や、刑法175条の構成要件を解釈する場面で必ず引用すべき定義である。性的表現の有害性を判断する際の客観的な基準として機能する。
事件番号: 昭和26(あ)172 / 裁判年月日: 昭和26年5月10日 / 結論: 棄却
刑法第一七五条にいわゆる「猥褻」とは、徒らに性慾を興奮又は刺戟せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。
事件番号: 昭和46(あ)1666 / 裁判年月日: 昭和46年12月23日 / 結論: 棄却
わいせつ文書等の頒布等を禁止した刑法一七五条は、憲法一三条に違反しない。
事件番号: 昭和46(あ)1905 / 裁判年月日: 昭和48年4月12日 / 結論: 棄却
一 猥褻文書の販売を処罰することは、憲法二一条に違反しない。 二 文書の猥褻性の有無は、その文書自体について客観的に判断すべきものであり、現実の購読層の状況あるいは業者や出版者としての著述、出版意図など当該文書外に存する事実関係は、文書の猥褻性の判断の基準外に置かれるべきものである。このように解しても、憲法二一条に違反…