判旨
刑法175条に規定される「わいせつな文書」の定義およびわいせつ概念の合憲性を前提として、原判決の犯罪成立に関する判断を維持したものである。
問題の所在(論点)
刑法175条の「わいせつ」の意義および同条の憲法21条(表現の自由)等への適合性が問題となる。
規範
刑法175条の「わいせつ」とは、徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するものをいう(チャタレイ事件大判等参照)。また、同条の規定は、公共の福祉の観点から憲法21条に違反しない。
重要事実
本件は、わいせつな文書の販売等を内容とする刑法175条違反の罪に問われた事案である。被告人側は、同条の解釈や事実認定、および起訴の適法性を争い、さらには違憲を主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、被告人の主張は独自の見解に基づき事実認定や法解釈を争うものに過ぎず、適法な上告理由に当たらないとした。その上で、犯罪の成立を認めた原判決の判示は正当であると判断し、職権による破棄事由(刑訴法411条)も認められないとした。
結論
本件における犯罪の成立を認めた原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決自体は簡潔な棄却決定であるが、チャタレイ事件等の先例を踏襲し、刑法175条の規定が合憲であること、およびその構成要件の解釈を再確認したものである。答案上は、わいせつ概念の三要素(性欲の興奮、性的羞恥心の侵害、性的道徳観念への反逆)を示す際の根拠の一つとなる。
事件番号: 昭和54(あ)690 / 裁判年月日: 昭和55年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条(わいせつ物頒布罪等)の構成要件は不明確ではなく憲法31条に違反しない。また、同条は憲法21条が保障する表現の自由を不当に侵害するものではなく合憲である。 第1 事案の概要:被告人が、わいせつな文書や図画を頒布・販売したとして、刑法175条違反(わいせつ物頒布、同販売等)に問われた事案…
事件番号: 昭和57(あ)311 / 裁判年月日: 昭和58年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条の「わいせつ」概念は憲法31条が要求する明確性の原則に反せず、同条による表現の自由等の制限も、公共の福祉に基づく合理的な制限として憲法13条、21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、わいせつな文書または図画を販売等したとして、刑法175条違反(わいせつ物頒布罪)に問われた事案…
事件番号: 昭和48(あ)2593 / 裁判年月日: 昭和49年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法21条1項が保障する表現の自由は絶対無制限ではなく、性生活の秩序や健全な風俗の維持という公共の福祉による制限を受けるため、刑法175条のわいせつ物頒布罪等の規定は合憲である。 第1 事案の概要:被告人が、3人1組の性戯や性交の場面等を、性器の形状や動き、行為者の言動などについて具体的、詳細かつ…