刑法一七五条が憲法二一条に違反しないとされた事例 原判決の説示が女性を不当に差別する思想に基づくとして違憲(憲法二四条二項違反)をいう主張が「欠前提」とされた事例 大審院判例を引用する判例違反の主張がすでに最高裁判所の判例があるとして不適法とされた事例―いわゆる「ふたりのラブジユース」事件ー
憲法21条,憲法24条2項,刑法175条,刑訴法405条3号
判旨
刑法175条(わいせつ物頒布罪等)の構成要件は不明確ではなく憲法31条に違反しない。また、同条は憲法21条が保障する表現の自由を不当に侵害するものではなく合憲である。
問題の所在(論点)
刑法175条の「わいせつ」という構成要件は、刑罰法令の明確性の原則(憲法31条)に照らして合憲か。また、同条による表現の自由の制限は憲法21条に違反しないか。
規範
刑法175条の「わいせつ」概念は、徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものを指すと解されるところ、その構成要件は、適用範囲が不明確であるということはできず、憲法31条(適正手続・刑罰法令の明確性)に違反しない。また、表現の自由を保障する憲法21条との関係においても、公共の福祉の観点から許容される必要最小限度の制限であり、違憲ではない。
重要事実
被告人が、わいせつな文書や図画を頒布・販売したとして、刑法175条違反(わいせつ物頒布、同販売等)に問われた事案である。被告人側は、同条の「わいせつ」の意義が不明確であり、適正手続を定める憲法31条に違反すること、および表現の自由を保障する憲法21条に違反することなどを主張して上告した。
あてはめ
わいせつ物頒布罪等の構成要件の不明確性については、先行する大法廷判例(昭和32年3月13日判決等)により、その意義が既に画定されており、社会通念に照らして判断可能であるといえる。したがって、被告人の主張する不明確性は認められない。また、表現の自由の侵害についても、性的な道義観念を維持し、健全な社会環境を保持するという公共の福祉を目的とする制限であり、憲法21条の趣旨に徴して、その制約は正当な範囲内にあると解される。
事件番号: 昭和54(あ)2018 / 裁判年月日: 昭和55年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条のわいせつ物頒布等の罪は憲法21条(表現の自由)や憲法31条(適正手続・明確性の原則)に違反せず、その故意として問題となる記載の存在自体の認識が必要でないとまではいえない。 第1 事案の概要:被告人らが、わいせつな文書を販売目的で所持していたとして、刑法175条違反に問われた事案。被告…
結論
刑法175条は憲法21条、31条に違反せず合憲である。被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
わいせつ物頒布罪の合憲性を肯定した「チャタレー事件」判決等を再確認したものである。答案上は、刑罰法令の明確性の原則や表現の自由の制約(二重の基準論等)を論じる際の、合憲判例の代表例として引用されるべき射程を持つ。
事件番号: 昭和57(あ)311 / 裁判年月日: 昭和58年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条の「わいせつ」概念は憲法31条が要求する明確性の原則に反せず、同条による表現の自由等の制限も、公共の福祉に基づく合理的な制限として憲法13条、21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、わいせつな文書または図画を販売等したとして、刑法175条違反(わいせつ物頒布罪)に問われた事案…
事件番号: 昭和58(あ)1546 / 裁判年月日: 昭和59年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条のわいせつ物頒布等の規定は、憲法13条、21条、31条に違反せず、また、他人の権利侵害や未成年者への配慮を欠く場合に限定して解釈しなくとも合憲である。 第1 事案の概要:被告人が刑法175条の罪に問われた事案において、被告人および弁護人は、同条が個人の幸福追求権(憲法13条)や表現の自…
事件番号: 昭和41(あ)1205 / 裁判年月日: 昭和42年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条にいう「わいせつ」な文書とは、徒らに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。文書の内容が性行為の叙述に終始し、表現の具体性や露骨性の程度にかかわらず、右要件を充足する場合にはわいせつ文書に該当する。 第1 事案の概要:被告人が…
事件番号: 昭和57(あ)165 / 裁判年月日: 昭和59年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条の「わいせつ」概念は罪刑法定主義に反せず、同条による処罰は表現の自由等を保障する憲法21条、19条、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、刑法175条に基づきわいせつ文書の出版等の罪に問われた事案。弁護人は、同条が読書の自由(憲法21条)や思想の自由(同19条)を侵害し、適…