日時、場所を異にし十数回にわたり開催した演芸の入場料につき、一括して虚偽の申告をして詐欺の行為により入場税を逋税した場合には、刑法五四条第一項前段を適用すべきではなく、併合罪として処断すべきである。
日時、場所を異にし十数回にわたり開催した演芸の入場料につき一括して虚偽の申告をした場合の入場税逋税罪の罪数
入場税法(昭和15法律44号)16条1項,刑法45条,刑法54条1項前段
判旨
観念的競合(刑法54条1項前段)が成立する場合、その数罪は一個の罪として処断されるため、さらに併合罪(同法45条)として処理する余地はないとする原判決の判断は、法の解釈を誤った違法なものである。
問題の所在(論点)
一個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、それらと他の罪との間で併合罪(刑法45条)が成立するか。観念的競合の性質と併合罪の関係が問題となる。
規範
一個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)の関係にある場合、科刑上は一罪として扱われるものの、罪数論としては数罪が成立している。したがって、これらと別の犯罪との間で併合罪(同法45条)の成否を検討する際には、観念的競合を構成する各罪を個別に考慮すべきであり、「一個の処断罪となる結果、併合罪として処置する余地がない」とする解釈は認められない。
重要事実
被告人が犯した罪の中に、一個の行為が数個の罪名に触れる関係(観念的競合)にあるものが含まれていた。原判決は、この観念的競合となる数罪について、刑法54条1項前段により「一個の処断罪」となることを理由に、他の罪との間で刑法45条の併合罪として処理する余地がないと判示した。弁護人は、この点に法令違反があるとして上告した。
あてはめ
原判決は、観念的競合が「科刑上一罪」として扱われるという効果を重視しすぎ、その実質が数罪であることを看過している。観念的競合は処断上の一罪にすぎず、犯罪の個数としては依然として数罪である。そのため、それらの各罪が他の確定判決前後の罪等と併合罪の関係に立つことは法律上当然にあり得る。したがって、一個の処断罪となるからといって併合罪としての処理を排斥した原判決の論理には違法があるといえる。
結論
原判決の判示には違法があるが、本件の諸事情に照らせば、この違法のために原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
罪数論において、観念的競合(科刑上一罪)と併合罪が併存する場合の処理を明確にした。答案上では、一連の行為の中に観念的競合が含まれる場合でも、それとは別個の行為による罪があるときは、観念的競合を構成する罪のいずれかと他の罪との間で併合罪が成立し得ることを前提に、最終的な処断刑を算定する必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)1452 / 裁判年月日: 昭和32年11月27日 / 結論: 棄却
一 地方税法(昭和二三年法律第一一〇号)第一五一条第三項の「入場税法の廃止前になした行為に関する罰則の適用については、なお、従前の例による」との規定は、従前の行為に関する限り、旧入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)の刑罰規定については何等変更なきことを規定したものと解すべきである。 二 同種の犯行につ…