一 地方税法(昭和二三年法律第一一〇号)第一五一条第三項の「入場税法の廃止前になした行為に関する罰則の適用については、なお、従前の例による」との規定は、従前の行為に関する限り、旧入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)の刑罰規定については何等変更なきことを規定したものと解すべきである。 二 同種の犯行についてその行為の時期によつて刑罰規定に差異を設けても憲法第一四条に違反しない。 三 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定は、事業主たる「人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者」が入場税を逋脱しまたは逋脱せんとした行為に対し、事業主として右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、したがつて事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業者もまた刑責を免れないとする法意である。 四 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定については、憲法第三九条違反の問題を生じない。
一 法律「廃止前になしたる行為に関する罰則の適用については、なお、従前の令による」との規定の趣旨 二 同種の犯行について、その行為の時期により刑罰規定を異にすることと憲法第一四条 三 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定の法意 四 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定と憲法第三九条
旧地方税法(昭和23年法律110号)151条3項,旧入場税法(昭和22年法律142号による改正前のもの)16条,旧入場税法(昭和22年法律142号による改正前のもの)17条ノ3,刑法6条,憲法14条,憲法39条
判旨
両罰規定は、事業主が従業員の違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかったという過失を推定した規定であり、無過失責任を課すものではない。したがって、事業主が過失の不存在を証明しない限り刑責を負うとしても、自己の責任に基づかない処罰を禁じる憲法の趣旨には反しない。
問題の所在(論点)
従業者の業務上の違反行為について事業主を処罰する「両罰規定」が、自己に過失がない場合まで刑責を負わせる無過失責任を規定したものとして、憲法(適正手続や自己責任の原則)に違反しないか。
規範
両罰規定は、事業主に対し、従業者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くすべき義務を課している。その法的性質は、事業主において右注意を尽くさなかった過失を推定する規定と解すべきであり、事業主が注意を尽くしたことの証明がなされない限り、事業主も刑責を免れないとするものである。
重要事実
被告人は事業主であり、その従業者らが入場税の逋脱行為を行った。これに対し、旧入場税法17条の3(両罰規定)に基づき、事業主たる被告人も処罰された。被告人は、当該規定が故意・過失のない事業主に他人の行為の責任を負わせるものであり、憲法39条等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
旧入場税法の両罰規定は、単なる他人の行為に対する身代わり出頭を強いるものではなく、事業主自身の選任・監督上の過失を前提とするものである。本件において、記録によれば事業主である被告人が従業者の違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたという主張・立証は認められない。したがって、過失の推定が覆されない以上、被告人は事業主としての注意義務を怠ったものと評価され、刑責を免れない。
結論
両罰規定は事業主の過失を推定する趣旨であり、無過失処罰を前提とする違憲の主張は理由がない。上告棄却。
実務上の射程
刑事法における自己責任原則との調整を「過失推定」という解釈で図った重要判例である。答案上は、両罰規定の合憲性を論じる際、無過失責任ではなく「選任監督上の過失」を処罰の根拠としている点、および実質的な挙証責任の転換を認めている点を明示する。また、補足意見にある無過失責任説との対比も、理論的な背景として理解しておく必要がある。
事件番号: 昭和42(あ)2862 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
入場税法第二八条は、興行場等の経営者または主催者である人に対し、その代理人、使用人その他の従業者がした同法第二五条第一項等にあたる行為につき、その行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかつた過失の存在を推定した規定と解するのが相当である。