判旨
刑法45条前段の併合罪にあたる複数の罪について罰金刑を選択する場合、同法48条2項に基づき各罰金額の合算額の範囲内で一個の罰金刑を言い渡すべきである。複数の罰金刑を各別に言い渡すことは法令の適用を誤った違法にあたるが、直ちに著しく正義に反するとまではいえない。
問題の所在(論点)
刑法45条前段の併合罪について罰金刑を科す際、刑法48条2項に反して複数の罰金刑を各別に言い渡すことの適法性と、それが刑訴法411条等の破棄事由(著しく正義に反する場合)に該当するか。
規範
刑法45条前段の併合罪について、それぞれ罰金刑を選択した場合には、刑法48条2項により、各罪について定められた罰金額の合算額の範囲内で、一個の罰金刑を言い渡さなければならない(罰金刑の併科不可・吸収合算の原則)。
重要事実
第一審判決は、被告人が犯した複数の罪(判決別表に掲げられた各事実)について、これらがすべて刑法45条前段の併合罪にあたると認定した。しかし、第一審は、これらの事実についてそれぞれ罰金刑を選択しながら、刑法48条2項に従って一個の罰金刑を言い渡すのではなく、別表の区分ごとに各別に三個の罰金刑を言い渡した。原判決もこの点を見過ごして控訴を棄却したため、被告人が上告した。
あてはめ
本件における各犯罪事実は刑法45条前段の併合罪の関係にある。それらに対し罰金刑を選択した以上、刑法48条2項の規定に則り、合算額の範囲内で一個の罰金刑を形成すべきである。したがって、三個の罰金刑を併科した第一審判決には法令の適用の誤りがあり、これを維持した原判決にも法令違反が認められる。もっとも、上告理由との関係では、かかる過誤は直ちに著しく正義に反するものとは認められない。
結論
併合罪について別個の罰金刑を科した原判決には法令違反があるが、破棄事由には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
併合罪の処断において罰金刑を選択する際の主文構成に関する基本判例である。罰金刑は自由刑と異なり、刑法48条2項により合算されるため、主文では一個の罰金刑(例:『被告人を罰金〇〇円に処する』)として言い渡さなければならない。答案上は、罪数論・刑の適用に関する基本原則を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和27(あ)6154 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
日時、場所を異にし十数回にわたり開催した演芸の入場料につき、一括して虚偽の申告をして詐欺の行為により入場税を逋税した場合には、刑法五四条第一項前段を適用すべきではなく、併合罪として処断すべきである。