判旨
不法領得の意思の存在を肯定し、本件金員が判示農業会の所有に属すると判断した原判決に誤りはないとした。
問題の所在(論点)
刑法上の領得罪(本件では金員の領得)の成否に関し、領得の対象となる財物の所有権の帰属、および不法領得の意思の存否が争点となった。
規範
刑法上の領得罪(窃盗、横領等)が成立するためには、主観的構成要件として「不法領得の意思」の存在が必要であり、客体については「他人の財物(所有権)」であることを要する。
重要事実
被告人が本件金員を領得したとされる事案において、第一審・原審は、当該金員が「判示農業会」の所有に属するものであると認定し、かつ被告人に「不法領得の意思」が存在することを認めて有罪とした。
あてはめ
原判決の判文から、本件金員が農業会の所有に属すると判断していることが窺い知れる。また、証拠に基づけば、被告人が権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用・処分する意思、すなわち「領得の意思」の存在も肯定できる。
結論
本件金員は農業会の所有に属し、被告人には不法領得の意思が認められるため、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
極めて簡潔な決定であるが、不法領得の意思の必要性を当然の前提としつつ、金員の所有権帰属を認定して罪の成否を判断している。答案上は、不法領得の意思の定義(権利者排除意思・利用処分意思)を記述する際の裏付けとして参照しうる。
事件番号: 昭和31(あ)3521 / 裁判年月日: 昭和32年6月27日 / 結論: 棄却
横領罪は、他人の物を保管する者が他人の権利を排除して、ほしいままにこれを処分する意思をもつてすることにより成立し、必ずしも自己の所有となしまたは自己が利益を得る目的を要しない。