判旨
窃盗罪における既遂時期について、財物に対する占有が従前の占有者から行為者へと完全に移転した時点をもって既遂と解すべきである。本判決は、先行判例を引用し、被告人の行為が窃盗の既遂に当たると判断した。
問題の所在(論点)
窃盗罪における既遂時期の判断基準、および本件被告人の行為が窃盗の既遂(刑法235条)に該当するか否か。
規範
窃盗罪(刑法235条)における「窃取」とは、占有者の意思に反して、財物に対する占有を自己または第三者に移転させることをいう。その既遂時期については、行為者が財物を自己の事実上の支配内に置いた時点、すなわち、財物に対する新たな占有を取得したと認められる段階をもって既遂と解する。
重要事実
本判決文からは具体的な犯行態様の事実は不明であるが、被告人が他人の財物を窃取しようとした際、どの段階で窃盗罪が成立するかが争点となった事案である。被告人側は既遂に至っていない旨を主張して上告したが、第一審および控訴審では窃盗の既遂が認められていた。
あてはめ
最高裁は、昭和28年10月22日の第一小法廷判決という先行判例を引用した。この判例法理に照らせば、財物が占有者の支配を離れ、被告人の確実な支配下に移ったといえる事実がある場合には、既遂が成立する。本件においても、記録上の事実に照らせば、被告人の所為が窃盗の既遂に当たることは明らかであり、未遂にとどまるとする弁護人の主張は採用できない。
結論
被告人の所為は窃盗の既遂に当たる。したがって、窃盗既遂罪の成立を認めた原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
窃盗罪の既遂時期に関するリーディングケース(昭和23年、28年判決等)の流れを汲む決定である。答案上は、財物の形状、大きさ、運搬の容易性等に応じ、「自己の支配内に置いた」といえる段階を認定するためのメルクマールとして利用する。特に、万引き事件等における既遂時期の検討において、本件が引用する判例法理は実務上の確固たる基準となっている。
事件番号: 昭和27(あ)1519 / 裁判年月日: 昭和28年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪における実行の着手後の既遂時期について、目的物を設置場所から取り外して自由に屋外へ移動させ得る状態に置いた時点で、占有が犯人の支配内に移ったものとして既遂が成立する。 第1 事案の概要:被告人らは、窃盗の目的をもって、特定の場所に設置されていた物件を、その設置場所から取り外した。その後、当該…