判旨
不可分一体の関係にある供述については、その一部のみを切り離して証拠として採用することは許されないが、本件においては原判決が不利益な部分のみを恣意的に採用した事実は認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法における証拠調べにおいて、不可分一体の関係にある供述の一部(不利益な部分)のみを証拠として採用することが許されるか。また、本件において原判決にそのような証拠採用の違法があるか。
規範
被告人の供述が不可分一体のものである場合には、そのうち被告人に不利益な部分のみを分離して証拠として採用することは許されない。もっとも、供述の全体を証拠とした上で、その一部を信用し、他の一部を排斥することは、自由心証主義(刑事訴訟法318条)の範囲内として許容される。
重要事実
被告人の弁護人は、原判決が被告人の供述のうち不可分一体となっている内容から、被告人に不利益な部分のみを証拠に採用したと主張して上告した。また、勾留手続の違法や量刑不当、憲法違反についてもあわせて主張がなされた。
あてはめ
記録に照らして検討すると、原判決が被告人の供述のうち不可分一体といえる内容から、不利益な部分だけを抽出して証拠に採用した事実は認められない。したがって、弁護人が指摘するような証拠法則の逸脱は存在せず、原判決の判断に訴訟法上の違法はないと解される。
結論
本件上告は棄却される。原判決が供述の不利益な部分のみを不当に採用したとは認められず、その他の主張も適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
供述の「不可分性」を理由とする証拠採用の制限を確認したものであるが、実務上は「証拠としての採用」と「証拠能力に基づき採用した後の信用性の判断」を区別する。本判決は、供述の一部のみを証拠として取り込むことへの制約を認める一方で、本件においてはその事実はなかったと認定しており、自由心証主義との境界線を示す際のリファレンスとなる。
事件番号: 昭和28(あ)588 / 裁判年月日: 昭和28年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留中に行われた供述調書を証拠とすることの適法性、及び起訴後の勾留に違法があったとしてもそれが直ちに判決に影響を及ぼすとはいえないことが示された。 第1 事案の概要:被告人が起訴前および起訴後の勾留期間中に供述を行い、その内容が供述調書として作成された。弁護人は、起訴前の勾留中の供述調書を…
事件番号: 昭和27(あ)568 / 裁判年月日: 昭和28年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決において数個の犯罪事実を認定する際、証拠の標目を一括して掲げたとしても、判文と記録の照合により各事実を認めた証拠が明白であれば違法ではなく、また標目中の判示に沿わない部分は排除されたものと解される。 第1 事案の概要:被告人が複数の犯罪事実について起訴された事案において、原判決はそれぞれの事実…