検察官は被告人AについてはBの供述調書を証拠として提出していない。それ故この供述調書を被告人Aの有罪の証拠として掲げたことは所論のとおり違法である。しかし、右供述調書の内容は被告人Aの公訴事実には全然関係のないものであり、その余の列挙証拠によつて被告人Aの有罪事実の認定は十分可能なのであるから、右違法は判決に影響を及ぼさないものというべく原判決を破棄することを要しない。(判例集四巻一号三〇頁、六巻三号三六三頁参照)
綜合認定をした数個の証拠中に証拠調を経ていないものがあつても判決に影響を及ぼさない一事例
刑訴法317条,刑訴法335条1項
判旨
被告人に対して提出されていない他人の供述調書を有罪の証拠として掲げることは違法であるが、その内容が被告人の公訴事実に関係なく、他の証拠により有罪認定が十分可能であれば、判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
証拠として提出されていない第三者の供述調書を有罪認定の証拠として掲げたことが、判決を破棄すべき「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」に該当するか。
規範
証拠として提出されていない書面を有罪の証拠として採用することは違法である。もっとも、当該違法が刑事訴訟法に定める破棄理由(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)となるかは、当該証拠の内容と被告人の公訴事実との関連性、および他の証拠による有罪認定の十分性を考慮して判断される。
重要事実
被告人Aの有罪を認定するに際し、原判決は、検察官が被告人Aに対して証拠として提出していなかったBの供述調書を有罪の証拠として掲げた。また、適用すべき食糧管理法施行規則の条文について、改正前後の適用に形式的な誤りがあった。
あてはめ
まず、Bの供述調書は被告人Aに対して証拠提出されておらず、これを有罪証拠とした点は違法である。しかし、当該調書の内容は被告人Aの公訴事実とは無関係であり、これを除外しても他の証拠によって被告人Aの有罪事実は十分に認定できる。次に、施行規則の適用誤りについても、当該改正は手続規定の追加に過ぎず、本件の事実関係には影響しない。したがって、いずれの違法も判決の結果を左右するものではないといえる。
結論
本件の証拠採用および法の適用に関する違法は、判決に影響を及ぼさないため、原判決を破棄する必要はない。
実務上の射程
証拠裁判主義の観点から提出外証拠の採用は厳格に否定されるべきだが、実務上、それが余事記載に等しい場合や、他の証拠で立証が完結している場合には、訴訟経済の観点から判決への影響が否定される。答案上は、法令違反の存在を認めた上で、「判決への影響」の有無を証拠の重要度や他の立証状況から検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和23(れ)970 / 裁判年月日: 昭和24年5月4日 / 結論: 棄却
旧刑訴法第六九條第三項によれば公判に關與した檢事の官氏名を記載すべきことを要求しているのであるから、前示の如く判決に檢事の官名遺脱したことは右法條に違反したものであることは所論の通りである。然し右のような法律違反は絶對的上告理由に該らないのであるから、その違反が裁判に影響を及ぼす虞れあるときに限り上告の理由とすることが…