刑訴四四条一項にいう「裁判の理由」とは、主文のよつて生ずる理由を指すのであつて、証拠上の理由のごときはこれに含まれないと解すべきであるから、有罪判決において、所論のように、何故にある証拠を採用し他の証拠を排斥したかの理由、あるいは採用した証拠の証明力の判断について必しも一々これを判示することを要するものではない。
刑訴法第四四条第一項にいう「裁判の理由」の意義
刑訴法44条1項,刑訴法335条
判旨
刑事訴訟法321条1項2号但書の「特に可信すべき情況」の有無は、外部的な特別の事情だけでなく、供述の内容自体によっても判断することができる。また、有罪判決において証拠の採用・排斥の理由を逐一判示することは、同法44条1項の「裁判の理由」として必要とされない。
問題の所在(論点)
1. 刑訴法321条1項2号但書の「特に可信すべき情況」を、供述の内容自体(内分的事由)から判断することができるか。 2. 有罪判決において、証拠の取捨選択の理由を判決書に具体的に記載する必要があるか(刑訴法44条1項の「裁判の理由」の範囲)。
規範
1. 刑訴法321条1項2号但書の「特に可信すべき情況(特信情況)」の存否は、結局は事実審裁判所の裁量に委ねられており、必ずしも外部的な特別の事情によらずとも、供述の内容自体から判断することが可能である。 2. 刑訴法44条1項にいう「裁判の理由」とは主文を導き出す直接の理由を指し、証拠の取捨選択や証明力の判断の過程について逐一判示することまでは要しない。
重要事実
被告人が有罪判決を受けた際、検察官面前調書等の証拠能力が争われた事案。弁護人は、伝聞証拠について「特信情況」の判断が不当であること、および裁判所がなぜある証拠を採用し他の証拠を排斥したかの具体的な理由を判決書に示さなかったことが、憲法違反および刑訴法違反(理由不備等)に当たると主張して上告した。
あてはめ
1. 特信情況の判断については、従来の判例を踏襲し、外部的事実(作成の経緯等)に限定されず、供述内容それ自体の信用性を検討することによって肯定できると解される。 2. 判決の「理由」の程度については、主文の根拠となる事実および法の適用が示されていれば足りる。どの証拠を信じ、どの証拠を信じないかといった証明力の判断過程は「裁判の理由」の本質的部分ではないため、その一々を判示しないことは違法ではない。
結論
1. 特信情況は供述内容自体から判断できる。 2. 証拠の取捨選択の理由を判示しなくても、理由不備の違法はない。
実務上の射程
伝聞例外(321条1項2号但書)の要件検討において、外部的事情だけでなく内容の具体性・合理性等を「特信情況」の根拠として論じる際に使用する。また、実務上の判決書記載事項の限界を示す規範として、理由不備の主張を排斥する際にも援用される。
事件番号: 昭和23(れ)1414 / 裁判年月日: 昭和24年2月22日 / 結論: 棄却
一 刑の執行を猶豫すべき情状の有無に關する理由は判決にその判斷を示すことを要する事項ではなく、またその証據理由を示す必要もないところであるが、刑の執行を猶豫すべき情状の有無と雖も、必ず適法なる證據にもとずいて、判斷しなければならぬことは所論のとおりである。ただこの情状に屬する事項の判斷については、犯罪を構成する事實に關…