控訴申立人に不服のないことが明らかな事項であつても、控訴裁判所が重ねて被告人を尋問し、証拠調をした場合には、旧刑訴法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則第六条によるべきではない。
控訴裁判所が被告人を尋問し証拠調をした場合と旧刑訴法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則第六条
旧刑訴法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則(昭和25年最裁規30号)5条,旧刑訴法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則(昭和25年最裁規30号)6条
判旨
控訴審において被告人が第一審の事実認定に不服がない旨述べた場合でも、裁判所が必要と認めて証拠調べを行った以上、判決書には原則的な方式により事実及び証拠を示すべきであるが、第一審判決の事実を引用し、当該審級での被告人の自白を証拠として挙げることは適法である。
問題の所在(論点)
控訴審が証拠調べを行った場合において、判決書に事実及び証拠を記載する際、単に第一審判決を引用し「不服がない」とする記載方法が、判決の理由不備(刑訴法335条1項、旧法360条1項)に該当するか。
規範
控訴審において、事案の真相解明や被告人の権利保護のために被告人尋問や証拠調べを実施した場合には、有罪判決の事実摘示及び証拠説明は、特例規則(旧刑訴法特例規則6条)による簡略な方式ではなく、原則的な規定(旧刑訴法360条1項等、現行法335条1項相当)に従い、認定事実とそれを裏付ける証拠を具体的に示さなければならない。ただし、第一審判決の事実を引用することや、当該審級の公判廷における自白を証拠とすることは、証拠説明として欠けるところがないものと解される。
重要事実
被告人は控訴審の公判廷において、第一審判決の認定事実に相違なく、不服はない旨を述べた。しかし、原審(控訴審)は、事案の真相解明等のために重ねて被告人尋問及び証拠調べを実施した。それにもかかわらず、原判決は「事実及び証拠」の欄において、特例規則6条に基づき「当裁判所において認定した事実は原判決(第一審)の認定した事実のとおりであり、被告人に不服がない」と判示するにとどめたため、判決書の方式の適否が争われた。
あてはめ
原審が実際に被告人尋問や証拠調べを行った以上、特例規則6条による簡便な記載は失当であり、原則的な事実摘示・証拠説明を行うべきであった。しかし、原判決が「事実」として第一審判決の事実を引用していることは明らかであり、これは事実の摘示として適合する。また、その事実は原審公判廷における被告人の自白により認定されたものと認められる。当該審級の公判廷における被告人の自白は憲法38条3項の「本人の自白」(補強証拠を要するもの)には含まれないとするのが判例の立場であるから、これを証拠として事実を認定した趣旨が明確であれば、証拠説明としても不足はない。
結論
原判決の判示には失当な点はあるものの、実質的には第一審判決の事実を引用し、原審での自白を証拠としたものと認められるため、理由不備の違法(刑訴法378条4号)には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における判決書の記載方式に関する判例である。現行法下においても、控訴審独自の事実認定を行う場合や、事後審としての枠組みの中で事実誤認を審査する場合の理由の記載の程度を検討する際の基礎となる。特に、公判廷の自白に補強証拠が不要である点や、第一審判決の引用による事実摘示の許容性を確認する場面で参照される。
事件番号: 昭和22(れ)341 / 裁判年月日: 昭和23年12月22日 / 結論: 棄却
一 憲法第三八條、刑訴應急措置法第一〇條各第三項違反は飛躍上告適法の理由とならない。(裁判官眞野毅の少數意見がある) 二 當事者において、或る法令が憲法に適合しない旨の主張をした場合に裁判所が有罪判決の理由中にその法令の適用を舉示したときは、すなわち、その法令は憲法に適合するとの判斷を示したものに外ならないと見るを相當…