一 所論現行犯人逮捕手続中の記載は、被告人の自白と相俟つて優に原判示事実を推認させるに足るものであるから、いわゆる補強証拠となり得るものであることもちろんである。 二 原判決中に「同法第一九条第一項第一号第二項により」とある同法とは、文章の前後の関係から見れば食糧管理法をさすもののように読めることは所論のとおりである。しかし、原判決は右規定を適用する理由として「押収に係る玄米は判示犯罪行為を組成したもので被告人以外の者に属しないから」ということを述べて右規定により玄米の換価金を没収しているのである。そして、食糧管理法第一九条は右引用した理由とは全く無関係な規定であるとともに、押収物が犯罪行為を組成したものであつて被告人以外の者に属しないという理由でそれを没収し得るような規定は、刑法第一九条第一項第一号第二項であることも裁判上周知の事実である。してみれば、原判決に同法とあるのは、刑法の誤記であると認められる。
一 現行犯人逮捕手続中の記載は自白の補強証拠となるか 二 判決における適用法条の誤記と誤記たることの認定
憲法38条3項,刑訴応急措置法10条3項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号
判旨
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織・構成をもつ裁判所を意味し、判決内容の具体的妥当性を指すものではない。また、自白の補強証拠は、自白と相まって犯罪事実を認定できれば足り、自白の各部分について個別に要するものではない。
問題の所在(論点)
1.量刑の不均衡が憲法37条1項の「公平な裁判所」に反するか。2.自白の補強証拠は、自白の内容をなす事実の全範囲について個別に必要か。
規範
1.憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもった裁判所による裁判を意味するものであって、個々の事件につき、その内容実質が具体的に公正妥当な裁判を指すものではない。 2.自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)については、自白と相まって全体として犯罪構成要件たる事実を認定できる場合には、自白の各部分について一々補強証拠を要するものではない。
重要事実
被告人は玄米の所持等に関連して起訴され、原審において有罪判決を受けた。被告人側は、①原判決が適用法条の表記を「刑法」とすべきところ「食糧管理法」と誤記した点、②他の同種事件と比較して量刑が著しく重く「公平な裁判所」の趣旨に反する点、③現行犯人逮捕手続書の記載が自白の全部を補強していない点を不服として上告した。
あてはめ
1.「公平な裁判所」は裁判所の組織的・構成的な中立性を保障するものであり、量刑が他の同種事件と比して権衡を失していたとしても、直ちに裁判所の組織としての不公平を意味せず、憲法違反には当たらない。 2.現行犯人逮捕手続書の記載が、被告人の自白と相まって全体として判示事実を推認させるに足りるものである以上、自白の細部すべてを網羅する補強がなくとも証拠法則上問題はない。 3.法条の誤記については、理由の記載から「刑法」を指すことが明らかであり、判決を破棄すべき違法とはいえない。
結論
本件上告は棄却される。量刑の不均衡は憲法37条1項違反を構成せず、また自白と相まって犯罪事実を認定できる補強証拠が存在する以上、有罪認定は適法である。
実務上の射程
憲法37条1項の射程を「組織・構成」に限定する判例として、量刑不当を憲法問題へすり替える主張を排斥する際に引用できる。また、補強証拠の範囲については「実質的補強説」の立場を支える基礎的な判例として、自白の細部と補強証拠の不一致が争点となる場面で有効である。
事件番号: 昭和26(あ)121 / 裁判年月日: 昭和27年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、組織および構成において偏頗(へんぱ)のおそれのない裁判所を意味する。この要件を満たす限り、特定の具体的な訴訟手続上の主張は憲法違反の問題ではなく、単なる訴訟法違反の存否の問題となる。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)における裁判所の判断や手続に偏りが…