判旨
判決書に被告人の氏名や住居の誤記があっても、記録上誤記であることが明白であり、被告人を特定する妨げとならない場合には、適法な判決として有効である。
問題の所在(論点)
判決書における被告人の氏名・住居の誤記が、刑事訴訟法上の手続違背(被告人の特定不十分)として上告理由にあたるか。
規範
判決書における被告人の表示(氏名・住居等)に誤りがある場合であっても、それが単なる誤記であることが記録上明白であり、かつ、その記載によって被告人の同一性を特定するにあたって支障をきたさない限度においては、判決の効力に影響を及ぼす重大な手続違背にはあたらない。
重要事実
刑事事件の原判決において、被告人の氏名(姓)および住居の記載に誤りがあった。弁護人は、この記載の誤りが手続違背であり、判決を破棄すべき理由にあたると主張して上告した。
あてはめ
本件における原判決の被告人の姓および住居の記載ミスは、記録に照らせば誤記であることが客観的に明らかである。また、このような誤記が存在したとしても、当該被告人が誰であるかを特定する妨げにはならない。したがって、被告人の同一性は保持されており、審判の対象や刑の執行対象を誤らせるおそれはないと評価できる。よって、本件の誤記は判決の根幹を揺るがすような違法な手続違背には該当しない。
結論
本件の記載誤記は単なる手続上の瑕疵にすぎず、被告人の特定を妨げないため、上告理由にはあたらない。上告棄却。
実務上の射程
判決書等の更正(刑訴法43条等参照)で足りる程度の軽微な誤記であれば、被告人の同一性が害されない限り、判決の有効性に影響しないことを示す。答案作成上は、被告人の特定が手続の前提として重要であることを踏まえつつ、実質的な同一性が認められるかという観点から論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)5145 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決書の記載が極めて不鮮明で判読不能な箇所が多く含まれる場合であっても、訴訟費用の負担に関する判断など形式的・実務的事項の処理が適切であれば、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:本件は、下級審の判決において文字の判読が困難な箇所が多数存在し、内容の把握に支障をきたす可能性がある事案であった…