判旨
判決書の記載が極めて不鮮明で判読不能な箇所が多く含まれる場合であっても、訴訟費用の負担に関する判断など形式的・実務的事項の処理が適切であれば、上告を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
判決文の記載が不鮮明な場合において、それが直ちに憲法違反または重大な法令違反として破棄事由に該当するか。また、上告理由が実質的に単なる不当を主張する場合の処理が問題となる。
規範
上告理由が憲法違反を主張するものであっても、その主張が実質において単なる法令違反を主張するにすぎない場合、またはその内容が不当な主張である場合には、上告を理由がないものとして棄却する。
重要事実
本件は、下級審の判決において文字の判読が困難な箇所が多数存在し、内容の把握に支障をきたす可能性がある事案であった。上告人は憲法違反等を主張して上告したが、具体的な憲法違反の根拠や法的論理の構成が不明確な状態であった。
あてはめ
上告人の主張は、形式的には憲法違反を掲げているものの、その実質は判決の不当を訴えるにとどまる。判決文中に判読不能な記号や文字の欠落が散見されるが、訴訟費用の負担(全部被告人の負担とする等)や主文の構成に照らせば、法的判断の根拠は維持されていると解される。したがって、適法な上告理由には当たらない。
結論
本件上告を棄却する。訴訟費用は上告人の負担とする。
実務上の射程
判決文の方式や記載内容に不備がある場合でも、それが直ちに判決に影響を及ぼす法令違反となるとは限らない。上告理由書において実質的な法令違反や憲法違反を具体的に特定できない限り、形式的不備のみをもって破棄を勝ち取ることは困難であることを示唆している。
事件番号: 昭和26(あ)2803 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の主張が実質的に単なる訴訟法違反にすぎない場合、憲法違反を理由とする上告適格を欠き、刑訴法411条の職権破棄事由も認められない場合には上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として上告を申し立てた。しかし、その主張の具体的内容は、原審が不当に公訴を受理し有罪判決を下…