本件差戻の控訴判決は、所論強盗殺人の公訴事実と予備的訴因として追加請求された賍物収受の事実との間には公訴事実の同一性がないから、その予備的追加の請求は不適法として許されないものと判断して事件を差し戻し、その差戻判決が確定したから、新らたに賍物収受の事実につき公訴を提起したものである。従つて二重に起訴したものとはいえない。
さきに予備的訴因として甲の公訴事実に追加された乙事実が公訴事実に同一性なしとして破棄差し戻された判決の確定後、新らたに乙事実につき公訴を提起することと二重起訴の有無
刑訴法338条,憲法39条
判旨
強盗殺人罪の公訴事実と、予備的訴因として追加請求された賍物収受罪の事実との間に公訴事実の同一性が認められない場合、当該追加請求を不適法として退けた確定判決の後に改めて賍物収受罪を起訴しても、二重起訴には当たらない。
問題の所在(論点)
強盗殺人罪の公訴事実に対し、公訴事実の同一性がないとして追加請求が却下された賍物収受の事実について、別途新訴を提起することが二重起訴(一事不再理効や公訴棄却事由)に抵触するか。
規範
公訴事実の同一性(刑訴法312条1項)が認められない別個の事実については、一方が公判係属中であっても、他方を新訴として提起することは二重起訴(刑訴法338条3号参照)に該当せず、適法である。また、前訴において訴因変更(追加)の請求が不適法として排斥された事実は、もはや当該手続の審判対象に含まれない。
重要事実
被告人は強盗殺人罪で起訴されたが、検察官は予備的訴因として賍物収受の事実の追加を請求した。しかし、差戻後の控訴審判決において、両事実の間には公訴事実の同一性がないとして追加請求は不適法と判断され、その判決が確定した。その後、検察官は改めて賍物収受の事実について新訴を提起したところ、被告人側が二重起訴にあたるとして争った。
あてはめ
本件では、前訴において強盗殺人の事実と賍物収受の事実との間に公訴事実の同一性がないことが確定判決により判断されている。同一性がない以上、賍物収受の事実は強盗殺人の公訴事実の範囲内に含まれず、前訴の審判対象から切り離されている。したがって、当該賍物収受の事実について新たになされた公訴提起は、前訴と同一の事件を二重に起訴したものとはいえない。
結論
賍物収受の事実についての公訴提起は適法であり、二重起訴には当たらない。
実務上の射程
公訴事実の同一性が否定される別罪については、たとえ関連する事実であっても訴因変更ではなく新訴によるべきであることを示唆する。訴因変更請求が同一性欠如を理由に却下された場合、その事由が確定すれば、当該事実について別訴を提起しても二重起訴の抗弁は封じられる。答案上は、公訴事実の同一性の有無を検討した後の帰結(別訴提起の可否)として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2362 / 裁判年月日: 昭和27年2月29日 / 結論: 棄却
第一審判決が起訴にかかる窃盗の事実を認定し、控訴審において、検察官が右認定の事実と同一の被告事件を陳述してその審判を求めたのに対し、控訴審が公訴事実の同一性の範囲内において賍物牙保の事実を認定して有罪の言渡をしても、控訴審が右賍物牙保の点について詳細に取調をしており、検察官は論告に際し附帯控訴をした上、本件を賍物牙保と…