占領軍物資不法所持の公訴提起の効果は、その不法所持を為すに至つた賍物収受行為に及ぶものと解すべきである。
占領軍物資不法所持の公訴提起の効果
旧刑訴法291条1項,旧刑訴法410条18号
判旨
公訴事実と判示事実との間で、目的物の名称や罪名が異なっても、犯行の日時、場所、犯人及び数量が符合し、基本的事実関係において同一性があるならば、審判の対象に含まれる。また、不法所持の公訴の効果は、その前提となる収受行為にも及ぶと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
公訴事実に記載された目的物の名称や罪名が判示事実と異なる場合、および「所持」の公訴事実に対して「収受」の事実を認定する場合に、公訴事実の同一性が認められ、審判の対象の範囲内といえるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項、256条3項)は、基本的事実関係において同一であるか否かによって判断される。具体的には、犯行の日時、場所、犯人、目的物の数量等の客観的事態が共通しており、単に目的物の名称や罪名が異なるに過ぎない場合は、事実の同一性が認められる。また、先行する収受行為と後行の不法所持行為の間には、公訴の効果が及ぶ程度の密接な関連性を認めることができる。
重要事実
被告人は、昭和23年4月10日に省線a駅において進駐軍物資である「チョコレート3ポンド」を所持したとして、政令165号違反の事実で公判請求された。しかし、第一審判決が認定した事実は、目的物が「チューインガム」であり、かつ不法所持に至る「収受行為」を含むものであった。被告人側は、公訴事実と判決の事実に同一性がないため、不告不理の原則に反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、公訴事実に記載された「チョコレート」と判決で認定された「チューインガム」は名称こそ異なるものの、犯行の日時(昭和23年4月10日)、場所(a駅)、犯人、および数量(3ポンド)において完全に符合している。このように客観的な犯行態様が共通している以上、基本的事実関係に同一性がないとはいえない。また、不法所持という状態は収受行為を前提とするものであり、不法所持の公訴の効果はその原因となった収受行為にも及ぶと解されるため、判決が収受の事実に及んでも審判の範囲を逸脱しない。
結論
公訴事実と判示事実は基本的事実関係において同一性を有しており、原判決が審判の請求を受けない事件について有罪判決をしたという違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴因変更の手続きを経ずに、公訴事実と異なる事実を認定できる限界(公訴事実の同一性)を判断する際の指標となる。特に、目的物の取り違えや、所持と収受のように時間的・論理的に密接な関係にある行為間での事実認定の弾力性を認めた点に実務上の意義がある。答案上は、日時・場所等の共通性から「単一性・同一性」を肯定する根拠として活用すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)2861 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賍物罪の成立において、被告人が当該物件が盗品等であること(賍物たるの情)を認識していたか否かは、原判決が挙げた諸証拠を総合して肯認できる場合、事実誤認の主張は上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人が賍物(盗品等)を譲り受けた等として起訴された事案において、被告人は、当該物件が賍物であるとの…
事件番号: 昭和25(れ)217 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
論旨第二點は、被告人Aに對する起訴事實は窃盜であるのに、原判決が賍物運搬として斷罪したのは、不告不理の原則を破るものだ、というのである。しかし賍物運搬は窃盜の事後においてこれに便益を確保する犯罪であるから、窃盜罪の公訴事實中には賍物運搬罪の事實をも含むものと解すべく、罪名に變更があつても、起訴事實の同一性を害するもので…