判旨
共謀者が共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、犯罪を実行に移した以上、自ら実行行為を分担しなくても共同正犯の責任を負う。この場合、誰が最初に犯行を提議したかや、実行に欠くべからざる行為をしたか、あるいは主謀者であったかといった事情は、共同正犯の成立を左右するものではない。
問題の所在(論点)
実行行為を分担していない共謀者(共謀共同正犯)について、共同正犯が成立するための要件は何か。特に、犯行の提議者であることや主謀者であること、あるいは実行に不可欠な役割を果たすことは、共同正犯成立の必須要件となるか。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、共謀者が共同意思の下に一体となって、互いに他人の行為を利用してその犯罪意思を実行に移したといえることを要する。実行行為を自ら分担していない共謀者であっても、上記の要件を満たす限り、共同正犯としての責任を免れない(共謀共同正犯の成立)。
重要事実
被告人は、第一審相被告人Aらと共謀した。その後、被告人自らは放火の実行行為を直接分担しなかったが、Aらによる放火行為を利用して判示建物に放火する意思を実行に移した。弁護人は、実行行為を分担しない者が共同正犯となるには、実行に欠くべからざる行為を行った者か、または主謀者でなければならないと主張して上告した。
あてはめ
被告人はAらと共謀した上で、Aらの行為を自己の犯罪遂行の手段として利用しており、共同意思の下で一体となって犯罪を実行したと認められる。誰が最初に犯行を提議したか、あるいは被告人が主謀者であったかといった点や、実行に欠かせない特定の役割を担ったかという点は、互いの行為を利用し合う関係がある以上、共同正犯の成立を左右する本質的な要素ではない。
結論
被告人は、自ら実行行為を分担していない場合であっても、他の共謀者の実行した放火行為について共同正犯としての責任を負う。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件として「正犯性(自己の犯罪として行う意思)」と「共謀(意思の連絡とそれに基づく実行)」があれば足りることを示した。主謀者性や実行上の不可欠性は、正犯性を推認させる要素にはなり得るが、それ自体が独立した必須要件ではないことを明示しており、答案上も「共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用したか」を軸に論じるべきである。
事件番号: 昭和43(あ)2552 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者に共同正犯としての刑責を負わせることは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる共謀共同正犯における共謀に参加した事実が認められるものの、当該犯罪の実行行為自体には直接関与していなかっ…