判旨
第一審判決において刑法60条の適用が明示されていない場合であっても、判文の全体から同条を適用したことが明白であれば、判決に違法はない。
問題の所在(論点)
判決において共同正犯として処断する際、刑法60条の適用を明示していないことが、刑事訴訟法上の判決の違法(理由不備または理由齟齬等)にあたるか。
規範
共同正犯の成立を認める場合、判決文において刑法60条の適用を明示することが原則として必要であるが、判文上の説示や認定事実の構成から、同条を適用して処断したことが客観的に明白であるといえる場合には、明示的な条文引用の欠落は判決を破棄すべき理由とはならない。
重要事実
被告人Dを含む複数の被告人が関与した刑事事件において、第一審判決は被告人Dに対して刑罰を科したが、その法律適用の際、共同正犯の根拠規定である刑法60条を適用した旨を判決文中に明示していなかった。
あてはめ
本件の第一審判決においては、刑法60条の明示的な言及はない。しかし、判決文全体の論理構成や事実認定の内容を検討すると、被告人Dが他の被告人と共同して犯罪を実行したことを前提としており、法律を適用して刑を言い渡した過程において同条を適用したことは、判文上自ら明白であると認められる。
結論
刑法60条の適用を明記していなくても、判文上それが明白であれば適法であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の記載形式に関する形式的な不備が、直ちに破棄事由になるわけではないことを示した。司法試験の答案作成においては、共同正犯を論じる際に刑法60条を摘示することが必須であるが、判例の立場としては実質的な判断内容が明白であれば足りるとする柔軟な姿勢を確認するにとどめるべきである。
事件番号: 昭和26(れ)2060 / 裁判年月日: 昭和27年4月18日 / 結論: 棄却
被告人はAB等と協力して判示犯罪の実行方を通謀し、被告人自らは右実行々為に加担しなかつたが、賍品の売込先に残つて現物の搬入を持つたというのであり、他の共謀者の実行々為を介して自己の犯罪敢行の意志を実現したものと認めるに十分であるから、被告人において実行担当者、実行方法について関知するところがないとしても共同正犯の罪責を…