控訴申立書が被告人の長男名義であつても、被告人の提出したものかどうか審理せずに不適法として棄却するのは、刑訴四一一条に該当する。
控訴申立書の名義人についての審理不尽が刑訴第四一一条に該当する一事例
刑訴法351条,刑訴法411条
判旨
控訴申立書に被告人以外の者(被告人の長男)の氏名が記載されている場合であっても、印影や公判の状況から誤記の可能性があるときは、裁判所は審理を尽くして適法な控訴の有無を確認すべきである。
問題の所在(論点)
被告人以外の者の氏名が記載された控訴申立書について、裁判所が事実関係を調査せずに直ちに不適法として控訴を棄却することが許されるか(刑訴法351条1項、385条1項)。
規範
控訴申立書に記載された被告人の氏名が真実の被告人と異なる場合であっても、書面全体の形式的特徴や公判記録上の諸状況を総合考慮し、単なる「誤記」であって被告人本人による申立てと認められる余地があるならば、直ちに不適法として却下せず、その実質を審理すべきである。
重要事実
被告人Bの長男A名義の控訴申立書が提出されたが、同書面の被告人表示欄には「被告人A」と記載されていた。しかし、Aの名下の押印は被告人Bが原審で使用した印影と同一であった。また、Bは自ら弁護人を選任し公判廷に出頭しており、控訴審の審理を受ける意思があることが推測できた。原審は、A名義であることを理由に審理を尽くさず、直ちに控訴棄却の判決をした。
あてはめ
本件申立書の印影が被告人Bのものと同一であること、およびB自身の公判活動から控訴の意思が推認できることからすれば、申立書の「A」との記載は「B」の単なる誤記であり、B本人による申立てである可能性がある。原審がこの点について審理・調査することなく、名義のみを理由に不適法としたことは審理不尽といえる。
結論
控訴申立を不適法とした原判決には審理不尽の違法(刑訴法411条1号)があるため、これを破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
刑事手続における書面の不備については、形式のみで判断せず、本人の真意や誤記の可能性を諸事情から実質的に検討すべきという「手続的正義・被告人の権利保護」の観点から活用できる。実務上は、追完や補正の機会を与えるべき場面の判断材料となる。
事件番号: 昭和26(あ)2313 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
第一審裁判所の判決書において有罪として認定摘示された犯罪事実の個数と宣告された判決において有罪として告知された犯罪事実の個数とが合致するかどうか、即ち判決書には全部有罪となつているが、宣告の際には一部分を無罪として告知したかどうかを上訴審において判断する場合、争なき宣告刑をその判断の資料の一つに供することは妨げない。
事件番号: 昭和25(れ)1197 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に被告人の氏名の誤記があっても、本籍、住居、職業、年齢等の記載により被告人の同一性が特定できる場合には、被告人の特定を欠く違法はない。また、盗品等関与罪における知情の事実は、取引の態様や事後処理等の間接事実を総合して認定することが可能である。 第1 事案の概要:被告人Aは盗品等の買受け等の罪…
事件番号: 昭和27(み)44 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
判決訂正申立期間経過後の訂正申立理由書の提出は不適法である。