判旨
常習賭博罪における個々の賭博行為は、それ自体が独立した数罪を構成するのではなく、被告人の賭博常習性を認定するための資料として一体的に評価されるべき包括一罪である。
問題の所在(論点)
常習賭博罪の成否を判断するにあたり、短時間のうちに反復された態様の異なる複数の賭博行為を、個別の数罪として扱うべきか、あるいは常習性を認定するための包括的な資料として扱うべきか。
規範
常習賭博罪(刑法186条1項)は、賭博行為の反復累行という習癖に着目した犯罪類型である。したがって、一定期間内に複数回行われた賭博行為は、それぞれが別個の罪を構成するのではなく、常習性の発現として包括的に一つの常習賭博罪を構成する。個別の賭博事実は、被告人の常習性を裏付ける認定資料(証拠)としての意味を持つ。
重要事実
被告人は、昭和24年5月17日の午前0時頃から約30分間にわたり、花札を使用して「メグリ」と称する賭博を数回行い、続けて同日午前0時30分頃から1時30分頃までの間に「ブタトリ」と称する賭博を十数回行った。第一審および原審は、これらの各行為を被告人の賭博常習性を認定するための資料として総合して判断し、常習賭博罪の成立を認めた。
あてはめ
本件において、被告人は「メグリ」および「ブタトリ」という異なる種類の賭博を連続して行っているが、これらは時間的・場所的に密接している。裁判所は、これらの行為を個別の罪として処罰する意図ではなく、判示された「被告人の賭博振り」を他の情況と総合し、常習者であるという属性を認定するための資料として用いている。したがって、判決文中に「反復累行」という表現があっても、それは数罪を認めたものではなく、一罪の構成要素たる常習性を説明したものと解される。
結論
被告人の行為は常習賭博罪の一罪を構成する。個別の賭博事実は常習性認定の資料に過ぎず、数罪を構成するとした主張は当たらない。
実務上の射程
常習犯(包括一罪)における個別の実行行為の法的性質を明確にする際に用いる。答案上は、常習性の認定において、行為の回数や種類がどのように評価されるかを論じる際の根拠となる。また、訴因において個別の賭博事実を列挙しても、それが直ちに数罪を意味しないことを説明する際にも有用である。
事件番号: 昭和26(あ)32 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が常習として賭博を行ったことが記録上明らかである場合には、刑法186条1項の常習賭博罪が成立し、原判決の維持に特段の不当な点はない。 第1 事案の概要:被告人は、本件の賭博行為について起訴されたが、弁護人は訴訟法違反等を理由に上告。しかし、記録によれば被告人が常習として本件賭博をしたものであ…