一 第一審判決のした密輸入物資の原価の認定が証拠に基かない違法があるとしても、その認定価格は右判決に証拠として引用している大歳事務官作成の犯則物件鑑定書の価額より遥かに下廻つており、被告人にとつては有利な認定があること原判決の説示するとおりであるから、その瑕疵は刑訴四一一条にいわゆる「判決を破棄しなければ著しく正義に反する」場合に該当しない。 二 関税法八三条三項に関する原判決の解釈(犯人各自から各その全額を追徴するものとしたもの)は正当であり、従つて第一審判決の追徴方法(犯人に平分して負担せしめることとしたもの)は失当たるを免れないがその措置は結果において被告人等の利益に帰しているのであるからこの点に関して上訴の利益がないものとした原判決には違法はない。
一 密輸入物資の原価の認定に証拠に基かない違法があつても刑訴第四一一条にあたらない一事例 二 関税法第八三条第三項の法意
刑訴法317条,刑訴法411条,関税法83条3項
判旨
関税法に基づく追徴は、原則として犯則当時における貨物の所有者から徴収すべきであり、共同所有者と認定された被告人ら各人に対して追徴を課すことは適法である。
問題の所在(論点)
関税法違反の事案において、貨物の没収が不能な場合に課される「追徴」は、誰を対象として行われるべきか。特に貨物の所有者が複数人いる場合の追徴の対象者が問題となる。
規範
関税法(昭和28年改正前)83条3項に基づく追徴は、原則として、犯則が行われた当時における当該貨物の所有者に対して課すべきものである。貨物が複数人の共有に属する場合には、その各所有者から追徴することが認められる。
重要事実
被告人A、B、Cらは密輸出入(関税法違反)の罪に問われた。第一審判決は、本件貨物の所有者を被告人AおよびCの2名であると認定した上で、両名に対して追徴を命じた。これに対し被告人らは、追徴の方法が不当であることや、証拠説示の不備、原価認定の誤りなどを理由に上告を申し立てた。
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…
あてはめ
本件貨物は被告人AおよびCの2名が所有者であると認定されている。関税法上の追徴の性質は、没収に代わる実質的な制裁としての側面を有するところ、その徴収対象は原則として犯則当時の所有者であると解される。したがって、所有者として認定されたAおよびCの2名からそれぞれ追徴することは、同法の正しい解釈に基づく正当な措置といえる。なお、第一審の認定価額が鑑定書より低額である等の事情は被告人に有利な瑕疵であり、破棄事由には当たらない。
結論
関税法上の追徴は犯則当時の所有者から徴収すべきである。所有者が複数名(AおよびC)存在する本件において、その両名から追徴した第一審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、関税法上の追徴対象を「犯則当時の所有者」に求めた点に実務上の意義がある。共犯者が複数いる場合でも、没収の対象物が誰に帰属していたかを基準に追徴の可否を判断する際の指針となる。
事件番号: 昭和51(あ)1045 / 裁判年月日: 昭和52年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項(昭和42年改正前)に基づき追徴を科される「犯人」とは、没収の対象となる犯罪貨物等の所有者に限られず、当該犯罪に関与したすべての犯人を指す。この解釈は憲法29条1項の財産権の保障に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和42年改正前の関税法違反(密輸入等)の罪に問われた。原…
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和45(あ)761 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 棄却
一 関税法(昭和二九年法律第六一号)一一八条二項により犯人から追徴すべき金額算定の基準たる価格、すなわち同項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物については、その犯罪が行なわれた当時における国内卸売価格(関税および内国消費税込)をいう。 二 昭和四一年法律第三六…