判旨
薬物事犯における所持の成否について、対象物が被告人の支配関係の下にあるといえる場合には、当該薬物の所持が肯定される。
問題の所在(論点)
薬物取締法規における「所持」の要件である支配関係の存否について、過去の時点においてもなお被告人の支配が継続していたといえるか。
規範
刑法上の「所持」とは、人が物を自己の支配内に置く状態をいう。直接的・物理的な保持に限らず、他者を介した場合や場所的隔たりがある場合であっても、客観的にみて当該物品がその者の支配関係の下にあると認められる場合には、所持の成立が認められる。
重要事実
被告人は、昭和24年7月頃、本件麻薬(ヘロイン)を自己の支配下に置いていたとして麻薬取締法違反(所持)で起訴された。弁護人は、当該時期において本件麻薬が既に被告人の支配関係から離脱していたと主張し、事実誤認を理由に上告した。なお、具体的な隠匿場所や管理状況の詳細については、本判決文からは不明である。
あてはめ
原審の認定によれば、本件麻薬は昭和24年7月頃においても依然として被告人の支配関係の下にあったと認められる。被告人が対象物を自己の意図に基づいて管理・処分し得る状態を維持していたといえる以上、物理的な把持が直接証明されずとも、客観的な支配が継続していたと判断される。弁護人の主張は、この事実認定を不当とするものに過ぎず、判例違反や違憲の主張は前提を欠く。
結論
本件麻薬が被告人の支配関係の下にあったとする原審の判断は正当であり、麻薬所持罪の成立を認めた結論に誤りはない。
実務上の射程
薬物や武器の所持罪において、物理的所持のみならず「場所的支配」や「補充的支配」の概念を用いて所持を広く認める実務の端緒となる判断である。答案上は、物の隠匿場所、場所への出入りの自由、他者への指示権限などの事実を拾い、それらが「支配関係の下にある」という規範を充たすか否かを論述する際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1898 / 裁判年月日: 昭和28年3月13日 / 結論: 棄却
所持罪における所持とは、社会観念上一定の人が一定の物につき事実上の支配を為し得る地位にありと認むべき関係をいうのであるが、それが二人以上の者の意思の連絡の結果に出ずる場合には、これをもつて共謀による所持ということができる。