麻薬取締法第一二条にいわゆる所持とは、麻薬を自己の支配内におく意思をもつて、自己の支配内におくことによつて成立し、自己の支配内におくに当り当該麻薬を利用し或は処分することによつて利得しようとする意思のあつたことはもとより必要ではなく、又自己の支配内におくことが事務管理としてであろうと、後日適式な届出をしようとする意思をもつてなされようとを問わず、すでに自己の支配内においたと認むべき客観的事実の成立する限り、右法条にいわゆる所持行為があつたものといわなくてはならない。
麻薬取締法第一二条にいわゆる「所持」とは
麻薬取締法12条
判旨
麻薬取締法上の「所持」とは、人が物を実力的に支配する状態をいい、必ずしも自己の身体に密着させている必要はない。
問題の所在(論点)
麻薬取締法12条(現行法上の関連規定を含む)にいう「所持」の意義、およびその判断基準が問題となる。
規範
麻薬取締法上の「所持」とは、人が物を自己の支配内に置いて実力的に支配する状態を指す。これは必ずしも物を自己の身体に密着させていることや、直接手中に握っていることを要せず、社会通念上、その物がその人の支配下にあると認められる状態にあれば足りる。
重要事実
被告人が麻薬取締法違反(所持)に問われた事案。被告人は、当該麻薬を直接自己の身体に保持していたわけではないが、その実力的な支配状況が「所持」に該当するかが争われた。なお、具体的な発見場所や隠匿状況の詳細については、本決定文からは不明である。
事件番号: 昭和30(あ)354 / 裁判年月日: 昭和30年5月28日 / 結論: 棄却
本件麻薬の所持が麻薬取締法にいう所持に当らないという主張であるが、同法にいう所持は必ずしも物理的な握持関係ではなく、法律的な観念であるから、所論のような事実であつても、また重畳的にも所持を認定することができないことはない。
あてはめ
麻薬の「所持」の有無は、物理的な保持の有無のみならず、当該物件に対する実力的支配の有無によって判断される。本件において、被告人が当該麻薬を自己の支配内に置いていたと認められる事情(原判決が認定した事実)に照らせば、たとえ直接身体に密着させていなかったとしても、社会通念上の支配を認めることができる。したがって、麻薬取締法上の「所持」にあたると解するのが相当である。
結論
被告人が麻薬を自己の実力的支配下に置いていると認められる以上、麻薬取締法上の「所持」に該当する。
実務上の射程
本判決は、薬物犯罪における「所持」の概念を、物理的な密着に限定せず「実力的支配」として広く解釈したものである。司法試験においては、薬物が隠されていた場所(住居、車両、共用部分等)に対する被告人の管理権限やアクセス可能性から、この「実力的支配」を肯定するあてはめを行う際の基礎となる。
事件番号: 昭和30(あ)3630 / 裁判年月日: 昭和33年2月11日 / 結論: 棄却
被告人が本件覚せい剤につき実力支配を有せずこれを所持しないのに「所持」の解釈を誤まり有罪としたことは憲法三一条に違反すると主張する。しかし、原判決はその挙示する証拠によつて、被告人は本件覚せい剤をA方に預け、同人はさらにこれをB方に預け、右Bは被告人のためにこれを保管し、被告人もまた本件覚せい剤がA方からB方に預けられ…