判旨
憲法37条2項は、裁判所が必要でないと認める証人まで喚問すべきことを義務付けるものではなく、証拠調べの必要性の判断は裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
裁判所が被告人の請求した証人等の証拠調べを行わないことが、憲法37条2項にいう「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられる」との規定に違反するか。
規範
憲法37条2項の規定(証人尋問権)は、裁判所が必要と認めない者まで職権で喚問し、あるいは被告人側から申請された証人をその必要性のいかんにかかわらず全て喚問しなければならないという趣旨ではない。
重要事実
被告人は、第一審および控訴審において証人尋問等の証拠調べが十分に尽くされなかったとして、裁判所の訴訟手続きに刑事訴訟法違反や憲法31条(適正手続き)、憲法37条2項(証人尋問権)違反がある旨を主張して上告した。また、累犯者であることを理由に差別待遇を受けたとして憲法14条違反も主張した。
あてはめ
憲法37条2項が保障する権利は、裁判所の適切な証拠調べの必要性判断を前提とするものである。本件において、裁判所が必要でないと判断して証人喚問を行わなかったことは、同条項の趣旨を逸脱するものではない。また、累犯者であることを理由に差別待遇をされた事実は記録上認められないため、憲法14条違反の前提も欠く。
結論
本件証拠調べの不実施は憲法37条2項に違反しない。また、差別待遇の事実も認められないため憲法14条違反にも当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠調べの必要性に関する裁判所の裁量を肯定する古典的判例である。司法試験においては、被告人による証人採用請求を却下する決定が適法か否かを論ずる際の憲法的根拠(およびその限界)として引用される。ただし、現代の運用では公判前整理手続等による絞り込みが行われるため、裁量権の逸脱・濫用がないかという観点から検討すべき点に注意を要する。
事件番号: 昭和25(あ)2812 / 裁判年月日: 昭和27年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所が必要でないと認める証人の喚問までを強制するものではなく、被告人に絶対的な証人審問権を付与するものではない。 第1 事案の概要:被告人側は、特定の証人の喚問を求めたが、裁判所がこれを必要でないと判断して却下した。これに対し、被告人側は憲法37条2項前段が規定する証人審問…