判旨
旧貸金業法に基づく届出を怠り、貸金業を行うことができなくなった後であっても、従来の貸金債権に係る利息等を受領する行為には、同法の利息制限規定(5条)が適用される。
問題の所在(論点)
貸金業等の取締に関する法律3条の届出をせず、同法上の「貸金業者」としての地位を喪失した者が、営業停止後に行う利息受領行為に対し、同法5条(利息等の制限)が適用されるか。いわゆる「廃業後」の受領行為の処罰可能性が問題となった。
規範
法律の施行前から貸金業を行っていた者が、所定の期間内に必要な届出を行わず、適法に貸金業を継続する資格を失った場合であっても、その後に過去の貸付債権から発生する利息等を受領する行為は、依然として当該規制法の規律対象となる。
重要事実
被告人は、貸金業等の取締に関する法律(旧法)の施行前から貸金業を営んでいた。同法附則2項は、既存の業者に対し一定期間内に大蔵大臣への届出を求めていたが、被告人はこの届出書を提出しなかった。被告人は、届出期間が経過し、法的に貸金業を行うことができなくなった後、従来の貸金債権に基づき利息等を受領した。
あてはめ
本件において、被告人は届出を怠ったことで貸金業を継続する資格を喪失している。しかし、同法5条の趣旨は高金利による暴利行為を規制することにある。そうすると、届出をせず貸金業を行うことができなくなった者が、過去の債権を回収する名目で高利の利息等を受領する行為を放置することは、法の規制目的を潜脱させることにつながる。したがって、資格喪失後の受領行為であっても、同法の適用範囲内に含まれると解するのが相当である。
結論
貸金業を行うことができなくなった後の利息等受領行為にも、同法5条の規定は適用される。したがって、被告人の行為は同法違反を構成する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)1064 / 裁判年月日: 昭和28年7月17日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律第五条の規定は、同法施行前から引き続き貸金業を行つている者が、同法附則第二項所定の期間内に同法第三条の規定による届出書を大蔵大臣に提出しなかつた者が、右期間経過後に更に貸金業を継続する傍ら同法施行前の貸金債権の利息等を受領する行為にも適用されるものと解すべきである。
行政上の資格を喪失した後の残務処理的行為であっても、処罰規定の適用が及ぶことを示した点に意義がある。現在の貸金業法における無登録業者の利息受領等、類似の脱法的な行為を検討する際の解釈指針として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1063 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律3条に基づく届出義務に違反し、猶予期間経過後も無届で貸金業を営む行為は、同法5条(現行の貸金業法違反に相当)の処罰対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、貸金業等の取締に関する法律(旧法)3条により、大蔵大臣への届出が義務付けられていた。同法附則2項には届出に関する猶予…
事件番号: 昭和27(あ)2827 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律における「貸金業」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付け又はその媒介を業として行うことを指し、不特定多数人を相手にする場合に限定されない。 第1 事案の概要:被告人は、貸金業等の取締に関する法律上の登録を受けずに、反復継続して金銭の貸付け等を行ったとして起訴された。弁護…
事件番号: 昭和26(あ)2002 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律の附則の規定は届出書が提出されることを前提とした規定であつて届出書を提出せずして引続き貸金を業とする行為まで保護する趣旨ではない。
事件番号: 昭和27(あ)2189 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律にいう「業として行う」とは、反復継続して金銭の貸付け等を行うことを指し、必ずしも営利の目的(利益を図ること)を必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、貸金業等の取締に関する法律(現:貸金業法)の登録を受けずに金銭の貸付け等を行った。被告人側は、同法5条(現:貸金業法4…