判旨
裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反したとしても、それが判決に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、上告理由とすることはできない。
問題の所在(論点)
裁判の遅延が憲法37条1項に違反する場合、直ちに上告理由(刑訴法405条)として認められるか。また、一連の恐喝行為(予約と金員交付)を一個の行為として一罪と評価することの適否が問題となった。
規範
憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」を受ける権利が侵害されたとしても、当該遅延が「判決に影響を及ぼさないことが明らか」である場合には、刑事訴訟法上の適法な上告理由とはならない。
重要事実
被告人らは、被害者Aを恐喝して工事の下請けを得ようと企図し、脅迫を加えて畏怖させた。その結果、下請けを予約させるとともに、食い繋ぎ料名目で現金5万円を交付させた。被告人らは恐喝罪(一罪)として有罪判決を受けたが、裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反すること、および判決の理由不備等を理由に上告した。
あてはめ
裁判の迅速性について、判例(昭和23年12月22日大法廷判決)に基づき、たとえ迅速を欠いたとしても判決の結果に影響を及ぼさないことが明白であれば、上告理由とはなしえないと判断した。また、恐喝の事案については、下請けの予約と金員の交付という結果が生じているが、これらは事前の企図を遂行した結果であり、社会通念上一個の行為による一罪として問擬するのが相当である。下請け予約と金員交付を併記したのは犯行内容の具体化に過ぎず、二罪を構成するものではない。
結論
上告棄却。迅速な裁判の保障に反するとの主張は、判決に影響を及ぼさないため採用できず、実体法上の判断(一罪の認定)にも違法はない。
実務上の射程
憲法37条1項違反を理由とする訴訟打ち切りの可否(免訴・破棄等)を検討する際の基礎的な判断枠組みとして機能する。ただし、本判決は単なる遅延を理由とする上告を否定するにとどまり、極端な遅延(いわゆる高田事件判決のようなケース)において免訴が認められる余地を完全に否定するものではない。
事件番号: 昭和26(あ)3716 / 裁判年月日: 昭和27年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反する場合であっても、それが判決の内容自体に影響を及ぼさないことが明らかである限り、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、裁判が迅速を欠いており憲法37条1項に違反する旨を主張した。また、被害者の書簡を新証拠として提出し、刑訴法4…