判旨
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、構成組織等において偏頗のおそれのない裁判所を指し、個々の事件の内容が具体的に公正妥当な裁判を指すものではない。また、自白の真実性を保障するに足りる補強証拠(憲法38条3項)は、犯行に使用された拳銃の存在等であっても認められる。
問題の所在(論点)
1.裁判手続の個別の不備が憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」に違反するか。 2.押収された拳銃等の物証が、自白に対する補強証拠(憲法38条3項)として認められるか。
規範
1.憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、その構成組織等において偏頗のおそれのない裁判所を意味するものであり、個々の事件につきその内容実質が具体的に公正妥当な裁判を指すものではない。 2.自白のみによって犯罪事実を認定することはできない(憲法38条3項)が、被告人の自白にかかる事実の真実性を保障するに十分な証拠(補強証拠)が存在すれば足りる。
重要事実
被告人Aらは、拳銃及び実包の所持等の罪に問われた。第一審において、証人B、Cの尋問手続に不備があったと主張されたが、原審(控訴審)において改めて適式な取り調べが行われ、被告人側に十分な審問の機会が与えられた。また、被告人の自白を補強する証拠として、共犯者の手中を転々とした後に押収された拳銃および実包が存在していた。
あてはめ
1.憲法37条1項の「公平な裁判所」は組織的な中立性を指す概念であり、手続上の瑕疵や裁判内容の当不当を直接包摂するものではない。本件では、証人尋問に際して審問の機会が十分に確保されており、裁判所の構成等に偏頗のおそれはないため、同条項に違反しない。 2.押収された拳銃および実包は、被告人が判示日時に所持していた実物であると記録上認められる。かかる物証は、被告人の自白にかかる事実の真実性を客観的に保障するものといえるため、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項には抵触しない。
結論
本件各上告を棄却する。原判決に憲法37条1項および38条3項違反の違憲はない。
事件番号: 昭和26(れ)1867 / 裁判年月日: 昭和27年2月15日 / 結論: 棄却
起訴後第一回公判期日までの間に、被告人の勾留及び保釈の決定をした裁判官が、その被告事件につき第一審の審理判決をしたとしても、憲法第三七条第一項に違反しない。
実務上の射程
「公平な裁判所」の定義(組織的偏頗のなさ)を論じる際の最重要判例の一つ。また、補強証拠の程度(真実性の保障)に関する規範の論述にも活用できる。特に刑事訴訟法上の論点(補強証拠の範囲)において、実体的な犯罪事実の裏付けがあれば足りることを示す際に引用すべきである。
事件番号: 昭和26(れ)2242 / 裁判年月日: 昭和27年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所の構成等において偏頗の恐れがない裁判を指す。被告人に対する量刑が共犯者等の他被告人と比較して重いとしても、直ちに不公平な裁判にあたるわけではない。 第1 事案の概要:被告人A(B)、C、D、Eらは刑事事件で起訴され、原審において有罪判決を受…
事件番号: 昭和26(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
公判廷外における被告人の自白の任意性の有無の調査は、必ずしも証人の取調によるの要なく、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができる。
事件番号: 昭和28(あ)536 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
所論は、第一審裁判所が被告人に対し、黙秘権を告げる前に、学校はどこまで行つたか等と尋問したこと、並びに証拠調に際し弁護人申請にかゝる証人からその取り調べを開始したことを捉え予断をもつて審理に当つたものであるから右は憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とはいえないというのであるが、一審裁判所の右措置が何等違法でない…
事件番号: 昭和25(あ)1740 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所による裁判を意味する。また、各公訴事実について被告人の弁解を求め争点を明らかにすることは、裁判官の釈明権行使として許容され、憲法及び刑事手続に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴された刑事事…