起訴後第一回公判期日までの間に、被告人の勾留及び保釈の決定をした裁判官が、その被告事件につき第一審の審理判決をしたとしても、憲法第三七条第一項に違反しない。
勾留及び保釈の決定をした裁判官がその被告事件について審判することの合憲性
憲法37条1項,旧刑訴法24条,旧刑訴法25条
判旨
起訴後第1回公判期日までに勾留または保釈の決定に関与した裁判官が、同一事件の第一審において審理判決をしたとしても、憲法37条1項が保障する公平な裁判所の要請に反しない。また、被告人にとって過重な刑であっても、それのみをもって憲法36条の「残虐な刑罰」には当たらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法20条各号に掲げられた除斥事由に該当しない、起訴後の勾留・保釈等の付随的裁判に関与した裁判官が、後の本案審理に関与することが憲法37条1項の「公平な裁判所」に違反するか。また、主観的に過重な刑罰が憲法36条に違反するか。
規範
裁判官が起訴後に勾留・保釈等の裁判手続に関与したとしても、その後に本案の審理及び判決を行うことは、憲法37条1項の「公平な裁判所」の原則に違反しない。また、憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、刑罰の内容そのものが非人道的であることを指し、個別の被告人の主観的事情により刑が過重に感じられることはこれに含まれない。
重要事実
被告人Aらの刑事事件において、第1回公判期日より前に当該被告人の勾留または保釈の決定を行った裁判官が、その後行われた第一審の公判において審理を担当し、判決を言い渡した。被告人側は、予断を排除できない裁判官が審理を行うことは、公平な裁判を受ける権利(憲法37条1項)を侵害するものであると主張し、また量刑の重さが残虐な刑罰(憲法36条)に当たると主張して上告した。
あてはめ
勾留や保釈の決定は、起訴後であっても第1回公判期日前の手続であり、被告人の有罪・無罪を最終的に判断する本案の審理そのものではない。このような付随的な決定に関与したからといって、裁判官が当然に偏見を抱くとはいえず、公平な審理が妨げられるものではないため、憲法37条1項には違反しない。また、残虐な刑罰の該当性は刑罰の客観的な内容により決せられるべきであり、被告人側からみて刑が過重であるという事情は憲法36条の問題とはならない。
結論
本件各上告を棄却する。勾留・保釈に関与した裁判官が審理を行っても憲法37条1項に違反せず、実刑の重さが直ちに憲法36条違反となることもない。
実務上の射程
刑事訴訟法20条7号の除斥事由(前審関与)の解釈において、勾留状の発付や保釈決定などの付随的手続は「職務の執行」に含まれないとする通説・実務を、憲法適合性の観点から補強する判例である。答案上は、公平な裁判所の意義や、除斥事由の限定的解釈を論じる際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1054 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成を持つ裁判所を意味し、第一審における証拠調手続の当否は同規定の関するところではない。 第1 事案の概要:被告人が第一審における証拠調手続の不当性を理由として、憲法37条1項が保障する「公平な裁判所における裁判」を受け…